2016 Fiscal Year Research-status Report
再洗礼派と近世ヨーロッパの民間信仰:スイスからアメリカへ
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16K03132
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
踊 共二 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20201999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再洗礼派 / メノナイト / アーミッシュ / アムステルダム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は17世紀後半以降に北米に移民(亡命)したスイス・アルプス地域の宗教的マイノリティである再洗礼派(メノナイトとアーミッシュ)の旅路とペンシルヴェニア州・オハイオ州・インディアナ州などへの入植過程を追い、彼らがいかなる性質の宗教・習俗を北米の地にもたらしたかを明らかにする試みであり、平成28年度はスイス、ドイツ、オランダの再洗礼派および彼らをとりまく社会・政治・文化に関する新しい研究書や史料集を収集し、最新の知識を得て個別的・実証的な研究を独自に行う基盤を築くことができた。佐賀大学の近世ドイツ史研究者(名誉教授)の所有する史料および研究所のコレクションを総合的に調査し、譲渡を受ける準備を行ったことも、今年度の成果である。 平成28年度の海外出張先にはオランダとドイツを選んだ。とくにアムステルダム市立公文書館に所蔵されている未刊行の書簡、義捐金帳簿、嘆願書等を調べ、約50点(416枚)を複写(電子化)することができた。史跡の巡見については再洗礼派共同体の分布するアムステルダム、ライデン、ユトレヒト、ハーレム、ドイツのミュンスターなどを対象とした。この巡見の結果、再洗礼派の隠し教会に共通する建築様式があることが分かった。野外集会時代を記念する円形の身廊がその例である。なお一次史料から得られた知見は、16世紀後半以降、オランダ再洗礼派が各地の同胞たち、オランダ総督、行政府、議会、個別の都市、改革派教会、ドイツのプロテスタント諸侯、スイス諸州の為政者や教会人と広範囲に文通し、使者の派遣を絶やさなかったこと、そのネットワークは彼ら独自の宗教意識、歴史観、人間観、自然観の形成と維持を助け、不断の再確認を可能にする回路であったことなどである。それはマイノリティのアイデンティティ形成とその永続化をもたらし、長距離の移動・移民を経てもそれは失われなかったと判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、平成30年度に予定していたオランダ(アムステルダム)の公文書館での調査のための連絡調整(史料の閲覧・複写の許可等)が早く済んだため、今年度の海外出張先を北米からオランダに変更し、北米への出張は平成29年度に延期した。ただし研究の進捗自体には影響はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は北米を中心にした調査を行う。なお平成29年度はドイツ宗教改革500年を記念する学会企画が数多く実施されるので、北米での調査に先立ち、ドイツの学会(国際宗教改革研究コンソシアム大会)において宗教改革と宗教的マイノリティに関する研究発表を行い、これまでの研究成果の一部を欧文の雑誌ないし書籍に公表したい。国際宗教改革研究コンソシアム大会には、北米での調査を行うさいの研究協力者(アメリカ人)も参加するため、打ち合わせを行う予定である。 なお出版物の企画としては平成29年度中に再洗礼派の歴史を含む宗教改革史の論文集を刊行する予定であり、すでに出版社との調整を進めている。
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Research Products
(2 results)