2017 Fiscal Year Research-status Report
再洗礼派と近世ヨーロッパの民間信仰:スイスからアメリカへ
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16K03132
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
踊 共二 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20201999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再洗礼派 / メノナイト / アーミッシュ / スイス / アメリカ / ペンシルヴァニア / 潜伏キリスト教徒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は17世紀後半以降に北米に移民(亡命)したスイス・アルプス地域の宗教的マイノリティである再洗礼派(メノナイトとアーミッシュ)の旅路とペンシルヴァニア州、オハイオ州、インディアナ州などへの入植過程を追い、彼らがいかなる性質の宗教・習俗を北米の地にもたらしたかを明らかにする試みであり、平成29年度は海外での学会発表、史料調査・収集、史跡調査、現地調査を行い、収集した史料の分析を進め、その成果の一部を編著、共著、論文等に反映させた。 平成29年度の大きな研究成果を挙げれば、ドイツ・ヴィッテンベルク市で開催されたドイツ宗教改革500年記念の学会で近世の潜伏キリスト教徒の信仰と社会生活に関する東西比較(再洗礼派とかくれキリシタン)を内容とする研究発表を行い、ドイツで出版される書籍(論文集)への原稿掲載を許されたこと、ハンブルク(アルトナ)、クレーフェルトなどに現存する17世紀以来の再洗礼派教会(メノナイト派/スイス系の亡命者を核とする共同体)での聞き取り調査と史料調査を実施できたこと、スイスのベルン、シャフハウゼン、バーゼル等で研究上有意義な17世紀の手稿史料を発見、複写できたこと、アメリカ・ペンシルヴァニア州のクッツタウン大学のドイツ文化研究所の研究者と研究交流ができたこと、オハイオ州のアーミッシュ研究者と研究交流ができたこと(手稿史料を閲覧・複写)、18世紀前半のメノナイト派スイス移民の子孫を対象とする聞き取りができたこと、などである(メノナイト派のエスニックマイノリティとしての自意識が浮き彫りになった)。国内では比較史的研究のためにかくれキリシタンの民俗に関する調査に取り組み、五島列島での聞き取り調査、史跡調査、岩手県大籠地区、大阪府茨木市での史跡調査を行い、いくつかの論考にその成果の一部を反映できたことも研究実績に数えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度に予定していたオランダでの海外調査を28年度に変更し、28年度に予定していたスイスでの海外調査を29年度に行うという変更を行い、訪問先にも若干の変更があったが、これは研究交流の相手、受入先との調整の結果であり、研究計画全体の進捗に影響はない。アメリカでの海外調査は予定どおり29年度に実施できた。オランダ、スイス、北米での史料収集については予想以上の成果があった(シャフハウゼンとバーセルの古文書館での調査は追加的に行ったものである)。予定していたドイツでの学会発表、書籍の出版、論文等の公表も実現できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに史料調査が大きく進めることができたので、30年度はその整理と分析、実証的な研究論文の作成と発表に注力し、当初予定していたスイスでの追加調査は31年度前半に行いたい。なお再洗礼派(アーミッシュ)の研究については国内の専門家や学術機関との研究交流を深化させたい。現在予定しているのは国立民族学博物館のアーミッシュ研究者との共同研究、特別展への協力、学術的講演の実施等である。
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Remarks |
(共著論文)Tomoji Odori, God's Vengeance and Forgiveness for Enemies, in: K. Fukasawa et al (eds.), Religious Interactions in Europe and the Mediterranean World, Routledge, 2017, 49-65.
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Research Products
(5 results)