2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03147
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
佐藤 公美 甲南大学, 文学部, 教授 (80644278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋史 / 中世イタリア史 / 反乱 / 抵抗 / 教会国家 / マルケ / フェルモ / 政治文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はイタリア現地でできるだけ多くの専門家と議論しつつ史料調査を行った。主たる対象地域をマルケ地方フェルモ市とし、フェルモ国立古文書館とフェルモ市立図書館を中心に史料調査と文献調査を進めた。またフェルモ大司教座古文書館の史料所蔵調査も行った。これらの資料調査の結果、14世紀後半のフェルモに関連する教会国家の一連の史料と都市コムーネフェルモの財政史料を総合し14世紀の反乱を地域から見た中世末期教会国家の実態の中に位置付けて明らかにしうる可能性が浮上した。これにはこの度の調査期間中にフェルモ国立文書館が行った所蔵史料整理の結果、報告者の研究テーマに即した未整理史料が発見されたことが寄与した。これらの史料についても年度内に可能な限りの調査と撮影を行ったが完了には至らなかったため、継続的調査が課題として残った。当該の史料群の中には都市コムーネ・フェルモの財務官を務めた人物の手による一連の覚書が含まれている。これらの史料により、これまで明らかにされてこなかった14世紀後半教会国家統治下の都市コムーネの財政、あるいは都市コムーネ財政の担い手となった人物の経済活動の実態の分析を進め、反乱と財政を統合的に考察する予定である。 また1370年代マルケ地方の反乱に関連する通信文の写しの一部をフィレンツェ国立文書館で調査した。フィレンツェ共和国の通信文からは、教会国家への反乱の担い手となった傭兵隊長らのフィレンツェ共和国およびその同盟諸国とのつながりを検討できることが明らかになった。2018年度はこのように現地で史料調査を重ねることで、フェルモ市のローカルな現実、教会国家という領域国家、諸国家の同盟という三層の関連する問題を総合的に検討し、一国家の枠組みを超えた反乱を研究するための見通しが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初2017年度に予定していたマルコ・ジェンティーレ氏(パルマ大学)を招聘しての講演会の実施が同氏の校務上の都合により延期になり、かつ2018年度は研究代表者の在外研究により実施が困難であったため、研究計画実施期間延長の申請を行い2019年度に計画した。この企画の準備は現在順調に進めている。 また「研究実績の概要」欄に記したように、2018年度中のフェルモ国立文書館の所蔵史料整理の結果、多くの新たな関連史料の存在が明らかになった。2018年度中にはこれらの調査と撮影を終了することができなかったため、2019年度に継続する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは2019年度中にフェルモ国立文書館での残された史料調査と写真撮影を進める。ついでフィレンツェ国立古文書館等の関連古文書館での史料調査を継続する。 2019年度はこれらの分析結果を整理し第一に14世紀後半の反教会国家反乱に関する論文の執筆を進める予定である。一方、「研究実績の概要」欄に記載したように、2018年度中にこれまで未整理であった新たな関連史料の存在が明らかになったが、これらは本研究計画の課題である抵抗の政治文化と反乱の問題を超えて中世末期教会国家の地域的現実を検討するための素材を提供すると考えられる。また多くの分量にも及ぶため、2019年度中は反乱についての研究に焦点を絞って成果をまとめ、その結果を踏まえ発展的な新たな研究計画の作成を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初2017年度に計画していたパルマ大学のマルコ・ジェンティーレ氏の日本招聘による講演会が同氏の校務上の都合により延期となったため、このために予定していた金額が未使用となった。また2018年度中に所属機関による在外研究を行ったため、現地での資料調査のための渡航費用がかからなかった。マルコ・ジェンティーレ氏講演会は2019年度に実施予定で準備を進めており、この招聘計画のために次年度使用額の一部を使用する。また2018年度の現地調査中にフェルモ国立古文書館で新たに整理された史料を中心に資料調査を継続するための旅費および関連文献の購入に使用する。
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