2017 Fiscal Year Research-status Report
考古遺跡を発掘調査終了後に地域の文化資源として活用する方法論の検討
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16K03152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 陽 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00771867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パブリックアーケオロジー / 文化遺産研究 / 埋蔵文化財 / 文化資源 / 考古学 / 発掘調査 / ソンマ・ヴェスヴィアーナ / 「アウグストゥスの別荘」 遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東京大学を中心とした調査団が2002年より行っているイタリアのソンマ・ヴェスヴィアーナの通称「アウグストゥスの別荘」遺跡の発掘調査を中心事例として、発掘調査途中にある考古遺跡を調査終了後に地域の文化資源として活用するための方法論を構築することを目指す。この目的を達成すべく、本研究では①文化遺産研究とパブリックアーケオロジー研究に見られる遺跡活用の先行研究の整理、②考古系文化財の取り扱いならびに土地利用に関するイタリアの現行法およびカンパニア州条例の解明、③ソンマ・ヴェスヴィアーナの地域社会との関係においての「アウグストゥスの別荘」遺跡の発掘調査の現状と社会的課題の解明、④同遺跡のステークホルダーの特定と分析、⑤同遺跡とソンマ・ヴェスヴィアーナの住民との関係の分析、⑥カンパニア州における考古遺産の活用状況の分析を進める。
平成29年度は、英語文献を中心に①を行い、②については2013年より進行中のイタリア文化遺産行政の大改革の実態・影響をイタリア語文献を精査しながら分析した。③、④、⑤に関しては、2017年10月にイタリアを訪問し、ソンマ・ヴェスヴィアーナにて実地調査を行った。そのイタリア訪問時にはまた⑥として、チミティーレ、ノチェーラ、サルノの博物館、ナポリ大学博物館を訪問し、各地域の考古遺跡が博物館を通していかに「語られて」いるかを調査した。2018年3月には、来日したアカデミア・ディ・ベッレ・アルティ・ディ・ナポリ大学のデ・シモーネ氏と共に、「アウグストゥスの別荘」遺跡の将来展望について打ち合わせを行った。研究成果の発信としては、2017年6月にフィンランドのタンペレにおける考古遺跡マネジメントのワークショップにて、また2017年9月にはオランダのマーストリヒトの欧州考古学会(EAA)にて自らが共同座長を務めたセッションにて、それぞれ英語で学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で行う①文化遺産研究とパブリックアーケオロジー研究に見られる遺跡活用の先行研究の整理、②考古系文化財の取り扱いならびに土地利用に関するイタリアの現行法およびカンパニア州条例の解明、③ソンマ・ヴェスヴィアーナの地域社会との関係においての「アウグストゥスの別荘」遺跡の発掘調査の現状と社会的課題の解明、④同遺跡のステークホルダーの特定と分析、⑤同遺跡とソンマ・ヴェスヴィアーナの住民との関係の分析、⑥カンパニア州における考古遺産の活用状況の分析、のいずれの作業項目もほぼ当初計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究事業の最終年度にあたる平成30年度には、これまでに収集・分析した資料とデータを整理することに注力し、発掘調査途中にある考古遺跡を調査終了後に地域の文化資源として活用するための方法論を構築することを目指す。また、学会発表ならびに査読論文への投稿を通して研究成果を積極的に発信する。
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Causes of Carryover |
当初予定では、2017年9月のイタリア調査は12日間程度の期間を予定していたが、校務の都合上、実際には7日間となった。このため、旅費支出が当初予定よりも減り、次年度使用額が生じるに至った。
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