2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03159
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑畑 光博 九州大学, アジア埋蔵文化財研究センター, 学術研究者 (70748144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00582652)
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50457420)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鬼界アカホヤテフラ / 幸屋火砕流堆積物 / 宮崎平野沖積地 / 機械式ボーリング / 土器付着炭化物 / 14C年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も鬼界アカホヤ噴火災害の実態調査を進めた。幸屋火砕流の分布範囲の把握(課題①)については、大隅半島南部においてフィールドワークを行った。大隅半島の南端部にあたる南大隅町佐多まで明瞭に堆積している同火砕流堆積物(層厚約0.7m)であるが、北へ約27㎞の鹿屋市吾平町の台地上の遺跡群では同火砕流堆積物を欠き、降下テフラのみとなることが把握できた。このことにより大隅半島では幸屋火砕流が肝属山地を越えていないことが確認できた。沖積地における鬼界アカホヤテフラ堆積物の抽出と分析(課題②)については、昨年度の調査地点の東方約890mにある宮崎県宮崎市の生目の杜遊古館(宮崎市埋蔵文化財センター)敷地内において機械式ボーリングを実施し、現地表面から約6m分のコアを採取することに成功した。堆積物の詳細な観察と記載はまだであるが、おおまかな層序概要を示すと、盛土(層厚約1.32m)、作土(約0.68m)、泥炭質土(約0.45m)、鬼界アカホヤテフラを含む堆積物(約1.22m)、それ以下は灰色のシルト層となる。次年度にコアの詳細な観察・記載、各種自然科学分析を行う予定である。激甚被災地における再定住プロセスの復元(課題③)については、大隅諸島の種子島と屋久島を対象とし、鬼界アカホヤテフラ後に形成された遺跡(南種子町上平遺跡・一陣長崎鼻遺跡、屋久島町一湊松山遺跡)で出土した縄文時代前期の土器に付着した炭化物と包含層中で土器と共出した炭化材も入手して14C年代測定を実施した。それらの測定値の較正年代にもとづくと、種子島における明確な定住集落跡の形成は鬼界アカホヤテフラ(5300 cal BC)の400年後以降、屋久島北部では、約1000年後以降という結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題①と課題③については、おおむね順調に進行することができた。しかしながら、課題②については、年度はじめに宮崎市内において機械式ボーリングを予定していたが、調査対象地を管理している施設側のスケジュールとの折り合いがつかなかったため、調査実施が年度後半にずれ込み、採取したコアの観察・記載、各種自然科学分析を次年度以降に実施することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
年度後半に実施した課題②にかかわる宮崎平野のボーリングコアの各種自然科学分析を行い、昨年度に実施したボーリングコア解析データとの比較・検討をした上で、鬼界アカホヤテフラ前後の環境変遷を復元し、当時の臨海部へのテフラ堆積による影響を明らかにしたい。また、幸屋火砕流堆積物の分布範囲に関する課題①と鬼界アカホヤテフラ前後の各土器型式の14C年代測定結果をもとに推定した激甚被災地各エリアにおける再定住の時期に関する課題③も加えて、研究成果を総括したい。
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Causes of Carryover |
年度はじめに宮崎市内において機械式ボーリングを予定していたが、調査対象地を管理している施設側のスケジュールとの折り合いがつかなかったため、ボーリング調査が年度後半にずれ込み、採取コアの観察・記載、各種自然科学分析を今年度中に執行することができなかった。次年度使用額については、ボーリングコアの各種自然科学分析等に使用する計画である。
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