2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03160
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
中井 均 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (10621427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 織豊政権 / 支城網 / 在地の石垣 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方と長野県地方における城郭への石垣導入状況の調査を実施した。 東北地方では福島県守山城で蒲生氏時代の石垣を調査した。東北への石垣伝播に豊臣大名が大きく関与したことが石垣工法より明らかにすることができた。また、猪苗代城においても蒲生氏が石垣を構築したことを明らかにできた。さらに山形城では発掘調査で検出された本丸の石垣が最上義光時代のもの(文禄年間か)と考えられ、大量の金箔瓦が出土していることと合わせて考えると、義光が豊臣秀次時代に石垣を導入して山形城を大きく改修したことも明らかにできた。なお、米沢市郊外で発掘された館山城は従来伊達政宗時代に築かれたものと考えられていたが、今回の調査で検出された石垣の工法より関ケ原合戦後に米沢に移された上杉景勝によって築かれたものであることを明らかにした。上杉氏は米沢城では石垣を用いていないが、こうした支城には豊臣政権時代に得た技術によって石垣を築いていたわけである。 一方、東北における在地の石垣を考えるために上山市の中山しろの調査をおこなった。中山城は典型的な戦国時代の山城で、曲輪は基本的には山を削平して階段状に配置する典型的な戦国時代の山城である。その主郭にのみ一段高く聳える櫓台状の土壇にのみ石垣がめぐらされている。元来伊達氏の城であった山城に蒲生氏郷が支城として天守台を石垣によって改修したものと見てよい。城域全体を石垣に変えてしまう守山城のような事例と、戦国時代の山城を引き継ぎ、天守のみを付け加える事例の存在することが明らかにできた。 長野県では高島城で豊臣大名である日根野氏によって築かれた石垣と、上原城のように在地の石垣のある城を調査し、信濃独自に発達する石垣構築技術の存在することを示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた東北の城の調査はほぼ終えることができた。特に山形城では最新の発掘調査の成果を得ることができた。従来考えられてきた江戸時代の石垣ではなく、金箔瓦の形状より文禄年間の最上義光時代に築かれたものと考えることができ、東北への石垣伝播を考える重要な資料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は九州における城郭への石垣導入を分析することとする。特に戦国時代に在地の石垣技術が存在したのか、それとも本格的な石垣は豊臣政権の九州制圧後となるのかを実際に山城を踏査することによって明らかにしてゆきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた調査が1ヶ所行くことができなかったので旅費に残が生じた。この行けなかった調査については次年度に実施する。
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