2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03160
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
中井 均 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (10621427)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 熊本城石垣 / 愛藤寺城石垣 / 明智光秀 / 黒井城 / 福知山城 / 須知城 / 笑路城 / 在地の技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本城の石垣修理について現地にて調査を行った。地震による被害により石垣内部の構造が栗石によって盛土され、その前面に石が積まれていた状況を把握することができた。こうした栗石はある程度の揺れに対しては石同士がさらに強固に結びつくが、その強度を越えると液状化によって栗石が崩れることも判明した。 熊本では加藤清正段階で日向への国境となる愛藤寺城についても慶長期の石垣として調査を行った。石垣の大半は元和の一国一城令による破城によって解体されており、残存状況は良くなかったが、こうした国境警備の城郭はほぼ総石垣によって築城されていることが明らかとなった。 また、本年度は丹波における城郭の石垣も調査を実施した。天正期に明智光秀が丹波に入国し、黒井城、岩尾城、福知山城などで石垣を築く。しかし丹波ではそれ以前に築かれた須知城、笑路城などでも石垣が認められる。特に須知城では高さが4mを越える高石垣が認められるが、こうした石垣は従来光秀によって改修されたものと捉えられていた。しかし、自然石の小石材を乱雑に積み上げた構造はむしろ在地に存在した石垣技術と考えられ、光秀とは直接的に関係しないと考えられる。織豊系城郭の石垣と戦国時代の在地技術による石垣の存在することを明らかにすることができた。 また、今年は海外、特に中世に石塔を多く築いた中国の石を積み上げる技術との比較もおこなった。石と泥土を交互に積み上げる工法は日本では認められないものの、戦国期の山城の発掘事例では間詰に粘土を用いた事例もあり、積むという技術に人類の普遍性も存在することの事例となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの調査により戦国時代に石垣が築かれた地域については実際に現地で調査することができ、また調査協力者による情報によりほぼ全国的な資料を把握することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年にあたるため、これまでの成果について公開報告会とシンポジウムを行う予定である。
|