2017 Fiscal Year Research-status Report
オリエント都市形成期における土器焼成技術と彩文顔料の横断的研究
Project/Area Number |
16K03164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小泉 龍人 東京大学, 東洋文化研究所, 特任研究員 (80257237)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実験考古学 / オリエント / 都市形成 / 彩文 / 土器焼成 / 窯 / 焼成温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、茨城県工業技術センター笠間陶芸大学校(茨城県笠間市)と東京大学(代理人:東洋文化研究所所長)の間で業務委託契約を交わして、前年度にディヤルバクル博物館(トルコ)より日本に持帰ったサラット・テペ遺跡の土器資料等の理化学的分析を実施した。おもな成果は以下の通りである。 ①サラット・テペの土器片を切断して、マイクロスコープによる断面の組織観察、顔料部・胎部の元素組成分析および鉱物組成分析を行ったところ、ほとんどの試料がほぼ同様の傾向を示し、これまでの一連の分析成果と同じく、900~1000℃の比較的高温、800~900℃の中温、800℃に届かない低温の3つの焼成温度帯に分類できた。②早稲田大学本庄キャンパス(埼玉県本庄市)で焼成実験した復元土器についても分析したところ、比較的短時間に還元焔で焼成されていたことがわかった。③サラット・テペで出土した顔料粉末の元素組成を参考にして復元顔料を製作して、850℃, 900℃, 950℃, 1000℃の酸化焔焼成、および900℃の還元焔焼成したところ、おおむね熔着したことから、サラット・テペの彩文土器は900~1000℃で焼成されたとしたこれまでの分析成果を裏付けることになった。 2017年8-9月、トルコ共和国カマンにあるアナトリア考古学研究所のカマン・キャンプに出張し、同キャンプ敷地内において彩文土器の復元焼成実験の準備作業を実施した。成果として、キャンプ周辺の村人らの協力により、村の廃虚に使用されていた日干しレンガを採取してキャンプへ移送して、同空き地に昇焔式土器焼成窯の燃焼室部分を構築した。およそ100丁ほどの日干しレンガを用いて、半地下式の鍵穴型プラン土器焼成窯を構築し、燃焼室上端まで築窯して作業を終了した。同窯の大きさは、長軸約240センチメートル、短軸約180センチメートル、高さ約100センチメートルとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究の最大の成果として、トルコのカマン・キャンプにて、土器焼成実験を実施する許可を同発掘調査団より取得して、キャンプ内の空き地にて土器焼成窯の築窯作業を開始することができた。実験用の土器焼成窯の構築作業はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策として、トルコのカマン・キャンプにて、本年度に実施した築窯作業を継続して、土器焼成窯の焼成室部分を完成させて、彩文土器の焼成実験を実施する予定である。その際、予め成分を配合調整した数十キログラムの実験用粘土を船便にて現地へ送り、フィールドコースに参加予定の各国大学生やキャンプ周辺の村の子どもたちに、オリエント都市形成期の彩文土器の特徴や土器復元製作を教育・指導しながら、本研究の復元実験を進めていく計画である。 なお、治安状況などの悪化により、現地での研究実施が困難になった場合、日本国内にて代替の焼成実験等を企画・実施する方向性も視野に入れている。同時に、すでに日本に持帰ってきている土器資料等の理化学的分析成果についても、入念な再検証を行う予定である。
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