2018 Fiscal Year Annual Research Report
Marine adaptation and behavioral ability proved by transportation of Kozushima obsidian at the Early Upper Paleolithic
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16K03165
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
池谷 信之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80596106)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神津島産黒曜石 / 蛍光X線分析 / 現生人類 / 往復航海 / 黒潮 / 海洋適応 / 台形様石器 / 愛鷹山麓 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.出土黒曜石の原産地推定と分布範囲の確定 神津島産黒曜石の分布範囲を確定するため、その境界付近にあたる甲府市立石遺跡の原産地推定を行い、1点の神津島産黒曜石を検出した。また八ヶ岳西麓に立地する弓振日向遺跡出土黒曜石の産地推定を実施したが、ここには神津島産黒曜石は含まれていなかった。こうした事例と既存の産地推定例を総合すると、八ヶ岳南麓付近が(北西側の)分布境界となることが判明した。 2.石斧石材とその産地 神津島産黒曜石を保有していた愛鷹集団の行動範囲を推定する目的で、石斧の石材となっている凝灰岩の産地推定を試みた。東海東部~西南関東の河川礫をサンプリングし、出土石斧と片理・斑状組織・比重などについて比較した。その結果、愛鷹山で用いられた石斧石材の多くは酒匂川上流域産であることが判明した。その分布の北~西側の限界は八ヶ岳南麓にあり、神津島産黒曜石の分布範囲とほぼ一致する。石斧はハイコストな石器であり、移動に際して携帯されることが多いため、この一致は愛鷹集団の行動範囲を示している可能性が高いという見通しが得られた。 3.産地推定法の改良と推定結果の検証 現在の蛍光X線分析による産地推定法は、機器に依存するX線強度をそのまま使っているため、ラボ間の比較が困難であり、産地推定結果の信憑性に対する疑問にもつながっていた。そこで黒曜石標準物質を用いた検量線法によって定量値を求め、さらに対数比解析と主成分分析を用いる新たな産地推定法を開発した。この方法によっても神津島産黒曜石は伊豆・箱根等の黒曜石と明瞭に区分できることが明らかとなった。 4.まとめ「カタログ化」 3年間の研究期間に実施した原産地推定事例と既存の報告書に掲載された出土事例に基づいて、神津島産黒曜石の出土遺跡リストを作成し、その主要な遺跡の概要を紹介した冊子を『後期旧石器時代初期における神津島産黒曜石』として刊行した。
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Research Products
(11 results)