2016 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮半島西南部の前方後円墳をめぐる倭と馬韓の交渉史
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16K03173
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
高田 貫太 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60379815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古墳時代 / 日朝関係 / 栄山江流域 / 馬韓 / 前方後円墳 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年8月5日(金)~8日(月)の第1回研究会において、前方後円墳がきずかれた地域圏の周縁部という点で、栄山江流域と共通性をみせる肝属平野周辺域を踏査するなかで、栄山江流域における前方後円墳の造営背景を検討することができた。特に、栄山江流域には専用甕棺や「多葬」、高塚などを特徴とする在地の墓制が展開し多様性をみせているが、南九州地域においても、地下式横穴墓や板石積石棺墓など在地に定着している墓制が展開している。そのような墓制と前方後円墳の関連性の把握の仕方に、比較研究が可能であろう。 2017年2月19日(日)~22日(水)の第2回研究会においては、百済圏たる錦江流域の遺跡踏査を行った。栄山江流域社会は5、6世紀にはさまざまな百済系の文化を受容・定着させる。また、倭においても栄山江流域や百済から移入された器物が確認されており、百済―栄山江流域―倭の錯綜した交渉関係を想定できる。その動向を考古資料から具体的に検討するために、埋葬施設や金工品、土器などについての資料調査を行った。特に、羅城里遺跡出土の帯金具や、公山城出土の馬冑、蛇行状鉄器などは倭においても類例が確認されており、交渉関係の一端をかいまみることができた。 さらに2016年5月24日(火)~27日(金)の、栄山江流域出土の埴輪についての資料調査では、調査した円筒埴輪や器材埴輪は、日本列島とは製作技法や形状が異なり、見本もしくは指導する工人が倭から栄山江流域へ伝わり、それに基づいて現地で製作された可能性が考えられる。 そして、2017年2月2日(木)~5日(日)の群馬県金井東裏遺跡の巡検では、栄山江流域では確認されていな住居の上部構造についての知見を深めた。また、渡来系の要素と考えられる埋葬施設(1号墳第1主体部)について、栄山江流域の潭陽西玉古墳群に類例があることが明らかになり、関連性を考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究課題は、①栄山江流域における集落・墳墓の資料集成と分析、②外来系資料の系譜検討、そして③ 調査と研究会の実施となっている。本年度は、研究会2回に加えて資料調査を2回行うことができ、栄山江流域の前方後円墳を取り巻く諸地域の状況や、倭と栄山江流域の関係史について、実際の資料に即した研究を推進することができた。「研究実績の概要」においても述べたが、特に栄山江流域から出土した埴輪の詳細な資料調査を実施することができ、日本列島の埴輪との関係性についての認識を一歩深めることができたと考えている。 また①についても、韓国側の研究協力者の協力を得て着実に進めている。そして、本研究の中間的な成果を、『海の向こうから見た倭国』(2017 講談社現代新書)の第4章にまとめることができた。 以上の理由から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も、平成28年度と同様の研究課題を設定している。そのために、今後も連携研究者や研究協力者と密に協議しながら、共同研究会、資料調査を推し進めていきたい。 特に、栄山江流域の対外関係を示す埴輪や金工品の資料調査を充実させ、平成30年度以降の「馬韓社会の構造と対外関係の検討」という課題に備えたい。
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Causes of Carryover |
当初の計画に沿って助成金を執行したが、端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は3784円と少額であるので、次年度の計画に沿って助成金を執行する予定である。
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