2016 Fiscal Year Research-status Report
地方中枢都市の経済基盤の変化と持続可能な発展の方向に関する研究
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16K03181
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Research Institution | Chugoku Gakuen University |
Principal Investigator |
日野 正輝 中国学園大学, 公私立大学の部局等, 教授(移行) (30156608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 広域中心都市 / 地方中枢都市 / 札仙広福 / 支店 / 階層分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
札幌,仙台,広島,福岡の4都市を指す用語として「広域中心都市」,「地方中枢都市」「札仙広福」の用語が比較的広く使用されているが,それぞれの用語がいつ,誰によって使用されはじめ,どのようなプロセスを経て定着したかについて知られていない。そこで,この点について文献と関係者からの聞き取りによって調査した。その結果,それぞれの用語について,下記の点が明らかになった。 1)「広域中心都市」は北川建次によって1962年に学術雑誌「人文地理」において旧六大都市に次ぐ都市階層として提唱されたものであった。その後,地理学界で広く採用され,一般概念化した。しかし,地理学界以外では,「広域中心都市」の用語がほとんど使用されることがなかった。 2)「地方中枢都市」の登場は意外に遅く,1970年代後半になって,国土庁に設けられた地方都市問題懇談会において使用されるようになったものである。その後国および地方自治体において広く使用され,札幌,仙台,広島,福岡の4都市を指す一般的呼称となった。1980年代初めには,中学社会科地理分野の教科書にも,仙台を地方中枢都市と呼ぶ記述が登場し,学校教育においても,当該用語が広められることとなった。ただし,全国総合開発計画において当該用語が登場したのが1987年の第四次全国総合開発計画以降であった。それ以前は,地方中核都市,地方ブロックの中心都市といった表現が用いられていた。 3)「札仙広福」は4都市の頭文字を表記した略称である。4都市が,第五次全国総合計画に4都市の役割とそのためのインフラ整備を反映させることを目的にした取組の中で使用された。4都市の中では広島市で多用された。しかし,当該用語の使用は関係都市の範囲に限られていた。 なお,現在,4都市間の階層差が問題にされる状況が生まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画に挙げていなかった地方中枢都市に関係した用語の起源に関する調査を手掛けた関係で,地方中枢都市の人口移動の分析が次年度の課題として残った。ただし,経済センサスを使用した支店集積量の動向分析については,結論は平成28年実施の活動調査の結果を待たなければならないが,平成26年の基礎調査までの分析は計画通りに終えた。その結果はすでに平成28年度日本地理学会学術大会にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,昨年度やり残した地方中枢都市の人口移動の分析を年度前半に実施する。その後,研究計画に掲げた仙台と福岡の集客産業の実態把握を進める。研究成果は,前年度のものを含めて国内外の学術大会にて発表する。 同時に,地方中枢都市の総合計画などを分析し,ポスト成長社会における都市の持続的活性化の方向についても考察を深める。
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Causes of Carryover |
地方中枢都市の人口移動統計の分析を次年度の課題とした関係で,資料収集に関係し支出が少なくなったため。加えて,札幌,福岡での資料収集も実現できなかったために,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,4都市の人口移動統計を1990年代以降のものについて取得して分析する。また,4都市での資料収集および聞き取り調査の回数を増やし,前年度に今後の課題とした部分を調査・分析し,論文投稿する。そのために,繰り越した使用額を使用する。
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