2018 Fiscal Year Research-status Report
高校地理カリキュラムにおける環境教育の国際比較研究
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16K03184
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中等地理教育 / ESD / ニュージーランド / ドイツ / フィンランド / ベトナム / カンボジア / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ニュージーランド(3月)およびインドシナ半島(9月)において現地調査を実施した。 ニュージーランドにおいては、冷涼な気候と豊かな草地資源を活用した畜産業(とりわけ酪農)が、同国の基幹産業になっている。しかし、国土の大半を占有する酪農場が、同国における環境負荷の最大発生要因になっていることも事実である。農地造成のために森林の大半が既に失われ、深刻な土壌流出が継続的に発生し、また家畜糞尿に起因する水質汚濁や温室効果ガスの増加が懸念されるためである。世界的な乳製品需要の拡大に対応した生乳増産によって、そのリスクはますます高まっている。その一方、外来生物の流入が畜産業にもたらす被害も深刻さを増していることから、輸入食品等に対するきわめて厳しい検疫体制が構築されている。このことが、一種の非関税障壁として機能している現状にもなっている。このように、ニュージーランドの生徒たちにとって最も身近かつ深刻な環境攪乱要因である酪農の現状と、その中等学校教育における取り扱いについて、資料収集および聞き取り調査を実施した。あわせて、高付加価値農業への転換をめざすニュージーランドの象徴的作目であるワイン醸造用原料ブドウについても検討を行った。従来、農地としての利用度が低かった乾燥地域における原料ブドウ産地の出現が、ローカルな環境攪乱要因になりうることが懸念されるためである。生産者における環境負荷軽減への取り組みと、そのことがブランド価値を創出する仕組みについて調査を実施した。 上記のほか、インドシナ半島(カンボジア・ベトナム)においても調査を実施した。急速な経済成長による環境改変が進行する中で、どのような環境教育カリキュラムが展開されているのかという点に着目した。現地大学等の協力を得て、都市開発・農地開発に対する取り組みと、それらの教育現場での取り扱いについてき切り調査及び資料収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の3年目である平成30年度の主たる目標は、主たる調査対象3か国(ニュージーランド・ドイツ・フィンランド)における資料収集と聞き取り調査の実施であった。このうち、ニュージーランドについては計画通り実施した。特に、2010年代に生じた変化についての資料収集と現状把握において、顕著な進展をみた。ドイツについては、本科研によらない渡航機会を活用して、現地大学の訪問および調査を実施するとともに、標本調査の実施に向けた準備をすすめたところである。本科研予算による調査は、フィンランドと併せて平成31年度に実施予定である。なお、フィンランドについては現地調査こそ未実施であるものの、資料収集等は継続的に実施している。また、対照事例としてのASEAN諸国(インドシナ半島・インドネシア)における調査も、継続的に実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はおおむね順調に進捗している。最終年度である平成31年度には、ドイツ・フィンランドにおける現地調査を実施する予定である。質問紙またはインターネット等を活用した標本調査の実施についても、準備を進めている。また、各国のナショナルカリキュラムや教科書等の比較・検討も行っており、平成31年度も着実に継続していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
フィンランドにおける現地調査を平成30年度中に実施しなかったため。なお、ドイツと併せて、平成31年度中に実施する予定である。主に旅費として使用することを予定している。
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