2018 Fiscal Year Research-status Report
漁場図・地誌書等にみる地域の海洋資源利用の過去と現在
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16K03186
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
橋村 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00414037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 漁場図 / 地誌 / 定置網 / 近世 / 名所図会 / 遊漁 / 汽水域 / メコン川 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、近世期における漁場図と名所図会・地誌書に描かれた海洋資源利用の解明を進め、成果の報告と論文執筆をおこなった。 漁場図については、「旧薩摩藩沿海漁場図」に描かれた鹿児島県内之浦の漁場利用について、現地において定置網漁業とそれに関わるエビスかつぎ祭りの調査、内之浦の網元である久木元家文書(『鹿児島県定置網漁業誌』所収(昭和8年))の分析をおこない、その成果を『東京学芸大学紀要』に論文としてまとめた。さらに、エビスかつぎ行事について、鹿児島県薩摩川内市上甑町平良と鹿島町藺牟田において聞き取りと文献調査をおこなった。平良の江戸時代の史料については、奄美市立博物館の童虎山房文庫においても写本史料を撮影調査した。 近世期の名所図会に描かれた海洋資源利用については、18~19世紀中葉までの『江戸名所図会』『尾張名所図会』『摂津名所図会』『紀伊名所図会』などに描かれた海辺の風景の分析をおこない、歴史地理学会で報告し、学会誌の『歴史地理学』に論文を執筆した。漁業や社会経済性とは異なる視点からの海辺の多様な利用(遊漁、レクリエーションなど)について言及した。各地の名所図会に描かれた漁業や魚食文化について、地誌書の記載との対応関係についても分析をおこなっている。海辺と内水面との間に位置する汽水域、干潟の資源利用の歴史的展開についても研究を進めた。この問題に関連してラオスとタイのメコン川流域の乾季の漁撈について現地調査を進めた。 地誌書に記された魚食文化についても近畿地方の山間部における海の魚のハレの利用について分析をおこない、論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漁場図の研究については、現地調査と関連文献調査を順調におこなうことができた。地誌書と名所図会を用いた海洋資源利用の研究については、学際的な視点が不可欠である点から研究方法の難しさを痛感しながらも、学会での発表に機会を得ながら、解明を進めることができた。 研究成果について学会発表と学会誌投稿、単行本への執筆などを進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は最終年に入っている。撮影した史料の分析を進めていく。 漁場図を用いた漁場利用については、「旧薩藩沿海漁場図」の佐多郷漁場図について分析を進め、『東京学芸大学紀要』への投稿をおこなう予定である。 近世近代の地誌書に描かれた海洋資源利用については、現在執筆中の単行本(『地魚』(法政大学出版局より刊行予定))において網羅的に分析、紹介をおこない、時系列と空間軸の違いを見据えた考察をおこなう。江戸時代の名所図会に描かれた海洋資源利用の実態については体系的な分析をおこなうことが課題となっているため、それに関わる原稿執筆をおこなう。また観光と漁業の関係の歴史分析については、広島県福山市鞆の浦の伝統的な鯛網観光見学の行事の調査などを進める。
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Remarks |
報告書 著者 石井正己、君塚仁彦、大澤千恵子、橋村修 書名『北海道・東北および沖縄を視野に入れた歴史認識の構築と教材開発に関する戦略的研究』東京学芸大学
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Research Products
(8 results)