2016 Fiscal Year Research-status Report
山地社会における土地の周縁化を考慮した垂直的土地利用モデルの再考
Project/Area Number |
16K03187
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
月原 敏博 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (10254377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90212026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土地利用 / 耕作放棄 / 地籍図 / 土地台帳 / ラダーク / 山地農業 / 垂直性 |
Outline of Annual Research Achievements |
山地社会における耕作放棄等,土地利用度の低下の問題は,これまで主に社会経済的な観点(市場近接性など)や生態的な観点(垂直性など)から検討されてきたが,本研究は,これらのモデルを統合し,山地の農業的土地利用の現状を解釈する新たな分析枠組みの構築を目指している。 本年度は,申請者らが以前から調査してきたインド最北部ラダーク地方のD村に関して,英領期の1906年作成の地籍図と土地台帳データを現地研究協力者の多大な協力のおかげで入手することができ,その分析を進めることを主たる作業として行った。この地籍図には村全体の耕地と林地,宅地,荒蕪地が壁面ほどの大きさ一枚の地図として描かれており,斜線を切って地上測量を行ったと思われる地図上の耕地一筆ごとに地番が付されており。また巨大な電話帳ほどの大きさと厚さがある土地台帳の方には,各世帯が保有する耕地一筆毎の地目や土地利用,面積,税額等が記録されているほか,各世帯の数世代にわたる世帯主名も記録されている。読解には,徴税官パトワリが用いる特殊なウルドゥー語の知識が必要だが,このデータから当時の村内の詳密な土地保有・利用状況の復元作業を行うためのデータの読み取りとその蓄積を行うことができた。 さらに,D村において以前に実施した現地調査の知見に基づき,生態的な側面を重視しながら歴史的に構築された農業的土地利用が,商品経済の受容・浸透に対応した農業的土地利用へと変化する状況をLand Use Science誌に報告し,山地社会で耕作放棄地を考える新たな視点を国際的にも提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,山地社会における農業的土地利用の変化を文献調査と現地調査により明らかにし,土地利用度の低下の問題を解釈する新たな分析枠組みの構築を目指している。 文献調査に関しては,D村の約100年前の地籍図と土地台帳を入手でき,その内容を詳しく分析するため特殊なウルドゥー語のデジタルアーカイブ化やチベット文化圏における地形や農業技術の語彙の整理を進めた。これにより,英領期におけるD村内の約70世帯の所有地の分布やその耕作状況,税額などを復元でき,現在の状況と比較するための基礎資料を準備できた。 現地調査に関しても,以前の現地調査で得られた資料を,本研究課題で挙げた視点に基づいて分析し,D村落に設置中の気象観測機器と農地を撮影する自動カメラのデータ収集と整備をおこない,新たな資料を追加するとともに,その近隣に位置するT村の調査許可を申請し,次年度以降の研究を円滑に進めるための準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査については,初年度に着手した英領期の地籍図と土地台帳の分析を,現地で活動する徴税官パトワリと現地で協議を行うことで,この資料の読解を深めてデータの活用を高めることを目指す。同時にD村の隣村でありながら生態的条件が大きく異なるT村についても同時期の資料を入手し,約100年前のラダーク地域の農業土地利用の復元作業を拡大する。 同時に現地調査によってD村とT村の現在の農業的土地利用の状況を,衛星画像なども用いながら記録し,ラダークに隣接するザンスカルやヌブラ地域も含めた広域調査により村落調査の知見がもつ普遍性について検証する。 これらの二つの知見に基づいて山地の耕作放棄等の土地利用度の低下の問題を解釈する新たな分析枠組みの構築を進める。
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Causes of Carryover |
文献資料の収集と現地調査のため,初年度に複数名が海外渡航をおこなうことを想定して研究予算の使用計画をたてた。しかし,現地カウンターパートの非常な協力により,英領期のラダークの村落の地籍図と土地台帳を渡航前に入手できたため,初年度はこの資料の読解とデータ整理を中心に研究を行った。この準備作業を優先させて初年度の海外渡航の人数を減らしてその分の渡航費を次年度に繰り越したが,それはそれによって次年度以降の現地調査の内実をいっそう確実に高められると判断できたからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,文献調査による知見に基づいて村落調査を主目的とした海外渡航を実施することにより,村落における詳細な資料が得られるとともに,ラダークの周辺地域も視野に入れた広域的な知見を得て,山地における耕作放棄等の土地利用度の低下の問題を分析する新たな解釈枠組みの構築を目指す。
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[Journal Article] Sleep quality among elderly high-altitude dwellers in Ladakh2017
Author(s)
Ryota Sakamotoa, Kiyohito Okumiyaa, Tsering Norboo, Norboo Tsering, Takayoshi Yamaguchi, Mitsuhiro Nose, Shinya Takeda, Toshihiro Tsukihara, Motonao Ishikawa, Shun Nakajima, Taizo Wada, Michiko Fujisawa, Hissei Imai, Yasuko Ishimoto, Yumi Kimura, Eriko Fukutomi, Wenling Chen, Kuniaki Otsuka, Kozo Matsubayashi
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Journal Title
Psychiatry Research
Volume: 249
Pages: 51-57
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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