2016 Fiscal Year Research-status Report
地震被災地の経験に立脚した震災復興策と防災・減災教育の地域間共有の促進
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16K03189
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 震災復興 / 防災・減災教育 / 阪神・淡路大震災 / 東日本大震災 / クライストチャーチ大地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は国内フィールドの兵庫県神戸市、和歌山県広川町、岩手県宮古市において小学校中学年の副読本を中心とした防災・減災教育資料の収集、これらのフィールドにおける震災復興や防災対策についての担当者からの聴き取りを実施した。特に副読本については東日本大震災後に各地で記載内容の調整が認められるので、その内容の分析と考察に取り掛かっている。 また、震災から20年余を経過した神戸市では、震災直前から最近に至るまでの持ち家住宅復興の状況把握の一環として、分譲マンション供給実態の考察途上にある。神戸市では震災後に経済の長期的低迷が顕著で、多くの都市で業務街となるような場所にもタワーマンションが出現しており、特異な震災復興の例として注目される。 他方外国フィールドでは、2011年に直下型大地震を経験したニュージーランドのクライストチャーチを再訪(従前の予備調査を含めて二度目)し、都心部における震災復興プロジェクトの進展状況を調査した。同地では同国を代表する防災救急救命センターが開業間近となり、市内のバスネットワークも震災前に比べて格段に向上していることが明らかになった一方、依然として都心部の各所で取り壊しを待つ損壊建造物が散見されるなど、日本と比較すれば極めて緩慢な復興プロセスが明らかになった。地震の規模の割には犠牲者が少なかった背景として、同地の住宅の大半が木造平屋建てあった点を指摘できることも聴き取り調査で分かってきた。犠牲者の大半が都心部の倒壊ビルで生じており、住宅地での犠牲者は皆無に近いからである。 さらに、直下型大地震を経験した同地で海溝型地震の被災地として注目されているサモア独立国へ足を延ばし、同地で教職に就いている同僚から防災・減災教育の実情を現地で学んだ。同国において地震災害を天罰と捉えるキリスト教的達観が珍しくないないことは防災教育に少なからず足枷となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査研究内容をほぼ達成しており、補足的に訪問した調査地でも本研究のテーマに関わる有益な示唆を得ることができた。さらに岩手県宮古市では、平成29年8月に実施する防災・減災教育の実践としての現地授業(前期集中講義)の予備調査も実施できた。一方、すべての研究が考察途上にあるため、研究内容を本格的に発信するには至っておらず、それは平成29年度以降の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度において、分析考察中の研究内容を一層進化(深化)させるとともに、これらの成果発信に向けて準備を本格化させる。 本研究課題のテーマが防災・減災教育であることに鑑みて、それを調査するだけでなく、実践することも研究課題の一つとして位置付けていきたい。平成29年8月に実施する現地実習において、受講生を東日本大震災の被災地である宮古市や三陸地方各地で防災・減災教育の最前線に触れさせることは、今後の防災・減災教育をリードすべき立場にある現役学生に計り知れない研究成果還元を果たす試みとなり得る。 海外フィールドでは、防災・減災教育を未調査(現状は都市復興調査)であるニュージーランドのクライストチャーチで、年度末に教育委員会等の学校教育関係者から同地の実情を聴取するとともに、他のフィールドとして津波危険地域に位置付けているカナダのブリティッシュコロンビア州ポートアルバーニを訪問し(平成29年9月)、学校関係者から防災・減災教育の情報提供を受ける予定である。ポートアルバーニは小中学生の短期交換プログラムで北海道網走市と協定を結んでおり、網走市の担当者と電話やEメールで情報交換を始めており、必要に応じて現地で詳しい情報を得ることも視野に入れている。 学術関係の集会(学会など)でも何らかの中間報告をしたい。また、勤務先の社会的責務に照らし合わせ、毎年担当している免許更新講習などの現職教員向け講義において研究成果の積極的還元を果たしていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度(平成29年度)には、海外フィールドを2か所訪問する必要があり、当初配分の予算では不足が必至であったため、平成28年度に早期から航空券を予約するなどの節約努力をした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度からの次年度(平成29年度)繰り越しについては、主に海外フィールドを往復するための交通費に充当するが、ここでも平成28年度と同様の節約を心掛ける予定である。
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