2019 Fiscal Year Annual Research Report
A comparative study on the formation process and structural change of ICT industry clusters in emerging countries
Project/Area Number |
16K03192
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
北川 博史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20270994)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 新興国 / インド / ICT産業 / 産業集積 / 空間構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、経済成長の著しいアジアの新興国におけるICT産業の産業集積地域の形成過程と近年生じつつある構造変化の実態を、インドに注目しつつ、サービスの質的な差異に応じた国際的な分業構造の一端を明らかにすることを目的としている。この研究目的を達成するために、新興国内のICT産業集積地域における企業集積の構造とその動態について把握し、続いて、ICT産業の集積地域の形成過程と構造変化の解明に接近した。結果として、以下の点が明らかとなった。一つは、2000年代以降のインド経済の急成長は、ICT産業の成長が大いに寄与している。インドのITサービス生産額の多くはその輸出によりもたらされていることに変化はなく、インドICT産業が輸出主導型産業として依然として重要な位置に置かれている。また、それまでのソフトウェア開発からITES/BPOの供給といった高度なサービスの提供という構造的な変化にともない、以前にも増して良好な輸出環境下にある。二つは、インドの有する労働力コストからみた比較優位性も当該産業の輸出指向型産業としての地位を確固たるものとしている。これまで当該産業は民族資本によるオフショア方式でのITサービスの提供が主であったが、多国籍企業自らが国内に直接投資を行いグローバルに展開する顧客へとサービスを提供する形態へと変化した。こうした多国籍企業の立地動向が当該産業の輸出環境を変化させてきた。三つは、ITサービス輸出額の多寡はICT産業集積の規模を反映しているわけではなく、むしろ、各産業集積地のITサービス業の成長性に基づいている。すなわち、ITサービスの輸出を指向するICT企業の集積が進むことにより、各産業集積地の発展が促進されており、ICT産業の発展とそれによってもたらされる当該産業の空間構造の動態は、労働市場の側面のみならず産業政策の動向に多大な影響を受けているといえる。
|