2016 Fiscal Year Research-status Report
大都市における疾病発生にともなう健康環境問題への人文地理学的貢献
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16K03195
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
香川 雄一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (00401307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 陽平 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10461021)
本岡 拓哉 立正大学, 地球環境科学部, 特任講師 (60514867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大都市 / 健康環境 / エスニシティ / 地域統計 / 人文地理学的貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
大都市における疾病問題の発生を通じた人文地理学における環境思想の受容について、人文地理学における健康環境研究の嚆矢を19 世紀のロンドンとし、産業革命以来、重化学工業化や都市の人口密集化によって人々の健康環境が損なわれていた中で実施された、コレラマップや酸性雨濃度の分布といった地理学的分析の現場を確認した。 居住・呼吸をめぐる大都市内部における健康環境の実態と課題については、タバコの副流煙による危険性が認識されるようになってきて、より身近な生活環境においても空気の浄化が課題となっていることと、住宅に使われる建材によっては化学物質の問題も生じていることを踏まえ、居住や呼吸に関する健康環境の諸問題について確認した 大都市のエスニシティをめぐる健康環境の実態と課題に関して、都市内部構造の社会地理学的分析によって、エスニックマイノリティは都市内部のセグリゲーションの中でも居住条件のよくない地域に集住させられてきたことを現地調査で確認した。 食・疾病をめぐる大都市内部における健康環境の実態と課題について、経済状態や年齢、さらには商店へのアクセシビリティによって、不利な条件に陥ることがあることを、地域的な統計データにより大都市の健康環境の実態を明らかにしようとした。 このように人文地理学的研究方法を他分野に理解させるとともに、人文地理学の内部においても研究蓄積との関連から健康環境の研究への有効性を検証し、人文地理学における健康/環境地理学を体系化する準備を整えつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境思想に関しては、都市化・工業化の初期における疾病発生などの健康環境問題の発生において、環境思想がいかに影響し、どのような人文地理学的な研究方法があったのかを確認できた。居住・呼吸環境に関しては、大都市内の住居や事務所など狭域における空気の汚染がどのようにして注目され、問題解決のための方策がいかにして講じられてきたのかを確認できた。エスニシティ環境に関しては、健康環境問題と大都市内部のエスニックセグリゲーションの関係を地域的な統計分析によって地図化した上で人文理学的研究方法を確認できた。食・疾病環境に関しては、飲料水・食品の摂取と健康との関係を過去にさかのぼって確認し、衛生・医療・保健といった課題が、大都市でどのように空間的に分析されてきたかを確認できた。人文地理学的貢献については、ロンドンで現地調査をすることにより、健康環境問題が初期に発生した段階での人文地理学的な分析視角を用いた研究方法を認識できた。
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Strategy for Future Research Activity |
環境思想において、環境問題への関心が広まるとともに人文地理学における健康環境問題へのフレームワークにどのような発展があったのかを現地調査と文献レビューによって検討していく。居住・呼吸環境に対しては、居住や呼吸という観点から社会の環境問題について大都市内部で現地調査を実施し、主に当事者へのヒアリング調査によって問題の構造を解明していく。エスニシティ環境に関しては、大都市内部の民族別居住地域における健康環境問題の実態を把握し、その改善のためにどのような人文地理学的アプローチが採用可能かを検討する。食・疾病環境については、大都市の地域統計分析から健康環境の実証研究においてふさわしい地域を選定し、大都市内部の地域的特徴から取り出せる要因から空間的な分析結果を裏付けていく。人文地理学的貢献に向けて、健康環境問題の人文地理学的研究蓄積が多いアメリカ合衆国や日本の大都市において現地調査をすることにより、人文地理学的なフレームワークの実効性について確認していく。
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Causes of Carryover |
次年度以降の調査費用として残しておくためである。具体的には、想定していた国内でのフィールドワーク調査を遂行できなかった、もしくはフィールドワークに十分に行くことができなかった、という理由が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に実施できなかった調査を試みる。そのために、当初の研究計画を遂行するとともに、次年度以降は前年度に実施できなかった調査を実行し、さらには1年目の研究調査で得た結果をまとめるための作業を実施する。したがって、具体的な地域調査に主に使用する予定としている。
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Research Products
(7 results)