2017 Fiscal Year Research-status Report
熱帯アジアにおけるアブラヤシ小農の自律性と持続可能性
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16K03200
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
祖田 亮次 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (30325138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アブラヤシ / 小農 / プランテーション / タイ南部 / マレーシア・サラワク州 / フィリピン南部 / 外国人労働者 / 自律性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究協力者の葉山アツコ(久留米大学)・生方史数(岡山大学)と数回の打ち合わせを行い、それぞれの進捗状況について意見交換を行った。現地調査は、生方・祖田によるタイ南部スラタニ周辺での調査、葉山によるフィリピン・ミンダナオでの調査、および祖田・葉山・生方によるマレーシア・サラワクでの調査を行った。 タイ南部においては、エビ養殖やココヤシから転換したアブラヤシ小農の経営戦略について調査を行ったほか、多生業農家にとってのアブラヤシの位置づけなどについても情報を得ることができた。また、ミャンマー人労働者の使用形態や、仲買人との関係性についての調査も行い、マレーシア・サラワクとの相違点を確認した。 フィリピン南部では、貧困対策としてアブラヤシ栽培が推奨されているが、貧困地域での栽培が多く治安の問題を抱えている。そうしたなかで「盗まれにくい作物」として認識されている点は興味深い。その他、マレーシアからの苗の輸入状況や、山地民労働力の参入状況、搾油工場の分布と小農の販売過程などについての情報を得た。 マレーシア・サラワク州では、政府系プランテーションの周辺における小農のあり方についての調査を行った。従来の企業-小農関係とは異なる、小農の経営状況についての新たな情報を得た。また、マレーシア独自の認証制度の導入計画や、内陸先住民たちによる小農アブラヤシ協会の設立といった、小農をめぐる新しい動向について関係者からインタビューを行うことができた。 3地域における状況が比較可能になる程度に情報を収集できつつあるなかで、各地の状況の相違が明瞭になってきたため、調査項目の再調整に関して祖田・葉山・生方で議論を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はフィリピン南部、タイ南部、マレーシア・サラワク州の3地域におけるアブラヤシ小農の調査を行うことができた。これによって、比較すべきポイントや今後の調査の課題等が明瞭化できつつある。代表者と研究協力者の3名での共同調査は、当初、フィリピンで行うことも想定していたが、治安の問題などから集団での行動が困難と判断されたため、現地語を習得している葉山が単独で行った。そのため今年度の共同調査はマレーシア・サラワクで行うことになったが、それぞれの知見を有効に交換・活用することができ、有意義な調査となった。
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Strategy for Future Research Activity |
夏までに打ち合わせを行い、比較研究のための調査項目の確認を行う。また、夏季休暇中あるいは冬期休暇中の共同調査の時期と方法について確定する。各自の各地域での調査は、これまで通り継続する。2018年度はフィリピン南部での共同調査を予定しているが、治安の問題等を考慮して、タイ南部かマレーシア・サラワク州での調査に振り替える可能性もある。年度末には、それぞれの調査をもとに、3地域を比較検討する論文の執筆について議論する。
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Causes of Carryover |
フィリピンでの共同調査が治安面での問題から困難になったため。次年度は、フィリピンにおけるアブラヤシ栽培に関する情報収集のために物品費として使用すると同時に、フィリピンでの現地調査を行うための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)