2016 Fiscal Year Research-status Report
エスニック境界の乗り越え方とボトムアップ的な人権概念生成に関する地理学的研究
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16K03209
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keiei University |
Principal Investigator |
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人権 / 社会運動 / 在日朝鮮人 / 連帯 / エスニック境界 / 都市社会地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1980年代以降の時期を対象に,在日朝鮮人と日本人とのエスニックな境界を乗り越える社会運動の実態とその含意を明らかにすることにある。 その方法の一つとして,当時の社会運動関係者へのインタビュー調査を実施した(@大阪)。研究当初は,トランスナショナルな市民運動の連帯を主題とする見込みであったが,調査を通じて得られた情報からは,むしろ都市の社会・経済過程におけるエスニック境界の乗り越えの契機が,労働運動においてより顕著に表れていることが示唆された。そこで,対象時期の労働運動に関する資料収集にも着手した。 一方,当初予定していた韓国での資料調査については,済州大学校の在日済州人研究センターにて関連資料の調査・複写を行い,社会運動のほか,親睦会といった日韓間にまたがる社会的ネットワークの展開に関する資料を得た。また,社会運動に関しては十分な情報は得られなかったものの,現地フィールドワークにて在日朝鮮人コミュニティからの送金が地域開発に及ぼした影響について知ることができた。 これらと並行して,現代のエスニック境界の量的側面に関するデータ(『住民基本台帳人口要覧』)について,市町村別の統計を得ることができたことから,その地域的差異の分析にも取り組んだ。現代日本において生じているエスニック境界の揺動が,いくつかの地域的パターンを伴って現出していること,またその背景には地域的に異なる国際人口移動と定住との関係があることを明らかにした。得られた結果の速報性に鑑み,前倒しで『地理空間』誌にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度中に予定していた日本国内でのインタビュー調査,および韓国での資料調査について,当初見込み通り完了することができた。また,インタビュー調査からは,本研究の主題について,労働運動と民族運動の接点という,都市の社会・経済の具体的過程との関連から分析しうる観点が見出された。これらの成果は,今後の研究の展開に大いに寄与するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,大阪の在日朝鮮人集住地区におけるインタビュー調査を継続する。前年は,主として民族運動に関わるインフォーマントを対象としていたが,民族運動と労働運動との接点を掘り下げて検討するために,労働運動関係者もインタビュイーに追加する予定である。また,それと並行して,1980年代の労働運動に関する諸資料の収集も進める。年度後半には,収集した資料の整理・分析に取りかかる。インフォーマントとのコンタクトが早めにとれた場合には,(大阪以外の)日本国内・韓国でのインタビュー調査を前倒しで行う。 これらの作業と並行して,日本におけるエスニック境界の乗り越えを地理学的観点から多面的に検討する目的で,比較対象となる大阪以外の地域についても関連資料の収集やインタビュー調査を実施する。具体的な対象地域は,三重県四日市市と長野県飯田市を想定している。
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Causes of Carryover |
データ入力を行う学生アルバイトの都合がつかず,金額を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に入力すべきデータは準備してあるため,早々に学生アルバイトを確保して執行する。
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