2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03210
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
青山 宏夫 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00167222)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 坤輿万国全図 / マテオ=リッチ / 地図史 / 地理思想 / ミネソタ大学 / 徳島大学 / 蜂須賀家 / 阿波国文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年新たに見出され、現在、米国・ミネソタ大学のJames Ford Bell図書館に保管されている坤輿万国全図・原本(以下、ミネソタ図とする)と、蜂須賀家の阿波国文庫に由来し、現在、徳島大学附属図書館に所蔵されている坤輿万国全図・写本(以下、徳島図とする)とが、直接的な模写関係にあることを、両者の詳細な比較検討によって実証した。これにより、これまで多くの写本が伝存しながらも、原本と直接対応する写本が未発見であった坤輿万国全図について、写本成立の具体的な事例を初めて見出し、近世日本における世界認識の形成に多大な影響を与えた坤輿万国全図の普及過程の一端を解明することに寄与することができた。 その成果は、米国・サンフランシスコ大学のRicci Institute for Chinese-Western Cultural Historyの招聘を受けて、同研究所が主催する国際シンポジウムにおいて発表するとともに、英語論文を公開した。また、この成果に徳島図の伝来に関する検討を加えて2016年人文地理学会大会(京都大学)において報告した。 資料調査については、サンフランシスコのAsian Art Museumにおいてミネソタ図を調査したほか、坤輿万国全図・写本とされている図のうち、西日本各地に所蔵されている図を中心に実施した(彦根城博物館2点、亀山市歴史博物館1点、中津市村上医家史料館1点、大分県立先哲史料館2点、臼杵市2点、広島県立歴史博物館1点等)。これらの写本の熟覧等による調査によって、坤輿万国全図・写本を新たな観点から再分類する必要性を見出した。その詳細については、次年度以降の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
坤輿万国全図の普及過程を考察するために重要な論点の一つとなる同図の模写過程に関して、具体的な資料によって初めて実証し、本研究の目的を達成するために着実に進展している。また、その成果を国内の学界のみならず国際的にも発信できた。 資料調査についても、当初の計画にはなかったミネソタ大学のJames Ford Bell図書館に保管されている新出の坤輿万国全図を、サンフランシスコのAsian Art Museumで調査することができた。また、西日本各地に所蔵されている坤輿万国全図・写本のうち、これまであまり公開されず、調査・研究もほとんどなされていなかった資料を中心に進めることができた。とくに九州については、本研究で計画していた資料すべてを調査することができた。 以上の諸点から、計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の成果を踏まえて、国内に現存する主な坤輿万国全図・写本の調査を進める。その調査にあたっては、次の3つの方向性のもとに実施する。①平成28年度の調査によって可能性を指摘できた再分類の観点からの調査、②平成28年度の資料調査から明らかになった新たな系統に留意した調査、③従来から指摘されている仙台学統に関わる写本の調査。また、これら以外の系統と考えられている写本等についても、適宜調査を進める。 以上の写本調査とともに、近世に刊行された坤輿万国全図系統の刊本の調査を進め、近世後期におけるいわゆる「マテオ=リッチ系世界図」の成立過程を明らかにする。また、その考察にあたっては、当時の思潮や学問動向に留意する。
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Causes of Carryover |
スキャニングのために借用申請していたフィルムの入手が、所蔵者の都合により、年度末近くにまで大幅に遅れたことから、スキャニング作業および同経費の確定も遅れた。そのため、残額587円が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越す金額は587円であり、当初計画に大きな変更はない。研究の推進方針にしたがって、調査旅費および図書の購入経費等に使用する。
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Research Products
(4 results)