2018 Fiscal Year Research-status Report
デジタル時代に求められる映像人類学-新たな映像民族誌の創造に向けて
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16K03218
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
村尾 静二 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外来研究員 (90452052)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 映像人類学 / インドネシア / 芸能 / 芸術 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はインドネシア、バリ島、ギャニャール県の調査村を3度訪れ(6月、10月、12月)、フィールドワークと民族誌映像作品の撮影を行った。バリ人の社会は、宗教、芸術、慣習を規範に成立しているといわれるが、これらの要素がいかに相互に関わり合うことによりバリの社会を形成し、活性化しているのか。この問いを民族誌映像の制作を通して明らかにするのが本研究のテーマとなっている。そこで、伝統芸能の伝承者でもある調査村の長老にご協力いただき、長老の視点から、老人の生活世界を通してこれらの要素をとらえた民族誌映像作品を制作している。 6月の訪問時には、調査村の村立記念に基づく宗教儀礼の調査を行った。宗教儀礼のなかで長老はバリの伝統芸能である影絵人形芝居ワヤン・クリを演じた。バリ人の社会においてワヤン・クリは娯楽であると同時に、バリ人の宗教であるバリ・ヒンドゥーと関係の深い芸術として宗教儀礼のなかで儀礼的上演が行われる。これは神に対する奉納上演であり、村のなかで最も芸術的素養と経験を持つ人物が演じるのが通例である。 10月の訪問時には、長老の生活世界について日常生活に着目して撮影を行った。生活空間、時間、家族、地域社会、人付き合い、仕事、自然・動物との関わり、風景等について調査と撮影を行った。 12月の訪問時には、それまでに撮影・編集した映像を調査地の人々と視聴し、その内容について話し合った。編集により正しく内容が伝わっているか、足りない映像は何か、映像から新たにどのような問題発見につながるのか等について、有意義な話し合いを持つことができた。 次年度は研究成果をとりまとめ学術論文と映像作品を完成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシア、バリ島、ギャニャール県の調査村を訪れ、宗教儀礼と芸術の関わりをテーマにフィールドワークを継続している。具体的には、調査村における芸術の伝承を担う長老の生活世界に着目し、日常生活、宗教儀礼、そのなかでバリ人の生き方の規範となっている宗教、芸術、慣習がいかに相互に作用し、バリ文化を形成し、活性化しているのかを考察する映像による民族誌を制作している。当初のスケジュールより多少の遅れはあるが、想定の範囲内であり、スケジュール以外の点においては順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はこれまでのフィールドワークで得たデータを精査して研究の成果をまとめる。学術論文と民族誌映像作品を作成する予定である。作成に際しては、その内容について調査村の調査協力者ともしっかり議論することにより、学術と研究倫理の両方の点において精度を高めていきたい。
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Causes of Carryover |
調査対象者が高齢であり、体調を考慮しながら慎重に撮影調査を進めている。そのため、1回の訪問における撮影調査は当初の予定の7割ほどである。ただ、スケジュールに多少の遅れは生じているものの、撮影調査そのものは順調に進んでおり、次年度も調査地を再訪することにより、両者にとって価値のある研究成果を作成していきたい。
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