2018 Fiscal Year Research-status Report
かくれキリシタンの近代における変化と文化遺産化に関する民俗学的研究
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16K03225
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
才津 祐美子 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (40412613)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 世界遺産 / 文化遺産 / 潜伏キリシタン / かくれキリシタン |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年6月末に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録が決まった。したがって、本年度は登録前後の動きと登録後の影響に関する調査を中心に研究を行った。 登録後の地域の反応としては、二通りあげられる。まずはもちろん、登録を喜び、今後の好影響を期待するものである。本文化遺産の主題が「長崎の教会群」だった頃から20年近くかけてようやく登録されただけに、それを祝うイベントが各地で開催された。実際、登録の効果はすぐに表れ、関係者の期待通り、構成資産各地を訪れる観光客数は顕著に増加している。2019年1月までの統計(長崎県世界遺産課)によれば、長崎県内の構成資産全体としては前年比約1.5倍、「平戸の聖地と集落」にいたっては約21倍という結果が出ている。もう一つの反応は、構成資産の内容や推薦書が描くストーリーの不備を指摘したり、今後の構成資産の維持管理および活用に懸念を示したりするものである。前者にはかくれキリシタンの位置づけも含まれている。後者に関しては、複数の構成資産で観光客数の急増を地域の活性化にうまく結びつけられていないことが顕在化してきている。 こうした調査の一方で、本年度は研究成果の社会還元も進めることができた。具体的には、登録前にテレビ局(NHK)から取材を受けたほか、登録直後に共同通信提供記事として「『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』世界遺産登録の意義と課題」を執筆し、複数の新聞に掲載された。また、長崎ではじめて行われたTED X SAIKAI(2018年7月)において、同様の内容について講演した。さらに、一般市民向けの公開講座において、世界遺産登録の仕組みや本文化遺産の問題点について解説する講演を行った(2019年3月)。これは、地域の人々の間であがっている構成資産の内容を疑問視する声に応えたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年7月初旬から10月にかけて体調を崩したことで、予定していた調査と学会発表を行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間を1年延長し、今年度行う予定だった調査と研究成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
2018年7月初旬から10月まで体調を崩していたため、予定していた現地調査や文献資料調査、学会発表を行うことができなかった。したがって、補助事業期間を延長し、遅延・変更が生じた分の研究を遂行することになった。次年度の経費は、現地調査・文献資料調査・学会発表の旅費や文献資料購入費等に使用する予定である。
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