2016 Fiscal Year Research-status Report
現代マレーシアにおけるイスラーム実践の「外縁」に関する実態調査研究
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16K03228
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
多和田 裕司 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (00253625)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イスラーム / マレーシア / 文化人類学 / 消費社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、現代社会におけるムスリムの実践にかんする先行研究の整理をおこなった上で、イスラーム外的な要因がムスリムの実践にいかなる形となって現れるかという観点からの検討を加えた。さらにこの点にかんする考察を進めるための資料として、マレーシアにおけるムスリムの間で観察されるイスラームの「外縁」上に位置すると思われる行為についての事例を網羅的に収集した。 とくに本年度は、具体的な検討の対象として、ムスリムにとってのクリスマス行事への関与を取り上げ、ムスリムの行動がイスラーム的要因とイスラーム外的要因との双方によって形作られているものであることをあきらかにした。マレーシアの場合、ムスリムのクリスマス行事への参加は、イスラーム教義によって是非が問われるものであると同時に、消費社会における経済的理由や多民族(多宗教)社会における民族の共存という価値によっても判断される対象であり、その結果、一人ひとりのムスリムの実践が多様な形をとって現れていることが確認された。 現地での調査としては、マレーシアのクアラルンプール市、アンパン市、クランタン州パシル・プテ郡において、文化人類学的なフィールドワークをおこなうとともに、マレーシア国立図書館およびマラヤ大学図書館において、関連する文献資料を収集した。シンガポールにおいては、マレーシアとの比較の視座を得るための資料収集として、シンガポール国立図書館で資料調査をおこなった。 本年度の成果としては、マレーシアにおけるムスリムのクリスマス行事への関与がどのようなメカニズムによって形作られているかについて、研究論文として取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は3ヶ年計画の研究の初年度にあたるため、ムスリムの実践にたいするイスラーム外的な要因の関与を分析するための視点を確立することが第一の課題であった。研究の遂行という点では、海外(マレーシア、シンガポール)での資料収集を含めて、当初計画通りに実施することができた。研究成果という点では、マレーシアにおけるムスリムのクリスマス行事へのかかわりについて、具体的な事例をもとに分析を進めることで、本研究課題を検討する上での考察の枠組みを得るとともに、本年度の成果を研究論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降も当初の計画通り研究を進める予定である。具体的には各年度を大きく3期にわけた上で、以下の通り研究を実施する。 第1期は4月から7月までの期間であり、先行研究の検討、前年度に入手した資料の精査などとともに、海外調査に向けての準備作業等をおこなう。 第2期は8月から9月までの期間であり、この期間に40日程度の海外での資料収集ならびに実態調査を実施する。具体的にはマレーシア調査(クアラルンプール市および周辺地域)に1カ月程度、比較対象地域であるシンガポール調査に1週間程度をあてる。なおこの期間の調査を計画通りに進めることができなかった場合には、12月から1月にかけて再度海外調査を実施する。 第3期は海外での資料収集終了後年度末までの期間であり、海外調査によって入手した資料の分析をもとにしながら、当該年度における活動の総括として研究論文を作成する。
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Causes of Carryover |
旅費で端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算に繰り越して使用する。
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Research Products
(1 results)