2018 Fiscal Year Annual Research Report
An anthropological study of the Islamic practice at "the outer edge" of Islam in contemporary Malaysia
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16K03228
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
多和田 裕司 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (00253625)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イスラーム / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、イスラームの「外縁」における実践の具体的な対象として、性的多様性に関するマレーシアの法制度やマレー系ムスリムの言説などを検討した。マレーシアにあっては、イスラームの伝統的教義解釈に基づきながら、性的少数者は法的、社会的に否定的に扱われてきた。それにたいして、近年、世界的にも性的多様性を容認する「普遍的」価値が広がりを見せるなかで、マレーシアでも性的少数者の権利擁護を主張する動きが活発化しつつある。各種のイベントや裁判事例などで観察された両者の衝突は、イスラーム的価値の圧倒的な強さを示してはいるものの、衝突の過程を微細に検討することで、現代社会においてイスラームが再定式化される様相をとらえることができた。 3ヶ年の研究期間を通しての成果としては、マレーシアのイスラーム社会において、商業化したクリスマスへの関与(平成28年度)、臓器移植技術の利用(平成29年度)、性的多様性の容認(平成30年度)等の、古典法学では非イスラーム的、反イスラーム的とされてきた事象を考察の対象としながら、現代社会に特有なイスラームのありかたをとらえることができた。具体的には、商業化の度合いが著しいクリスマスは、いまや多くのムスリムが享受し、経済的にも大きなビジネス機会となっている。臓器移植については、イスラームの指導者層からは古典法学とは異なる形での、臓器移植に適合的な教義解釈がなされるようになったが、一般のムスリムの間では古典的教義解釈そのままに臓器移植はほとんど容認されていない。性的少数者にたいしては上述の通りである。これらはいずれも「外縁」において現れた、現代社会に再定式化しようとするイスラームの多様な姿であり、外部の価値との衝突や交渉によってイスラームが変容する過程にほかならない。 各年度に設定した研究テーマについては、それぞれの年度において研究論文として発表した。
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Research Products
(1 results)