2016 Fiscal Year Research-status Report
「共同養育」(co-parenting)が先導する新たな家族に関する人類学的研究
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16K03231
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
上杉 富之 成城大学, 文芸学部, 教授 (00250019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 性的マイノリティ(LGBTIQ) / 「共同養育」 / 拡大家族 / 親子・家族・結婚 / アメリカ / オランダ / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、欧米の一部の国で徐々に認知されるようになってきた性的マイノリティ(LGBTIQ)の新たな子どもの作り方ないし育て方、「共同養育」(co-parenting)に注目し、現在、世界的な規模で進行している親子・家族・結婚の変動の実態の一端を実証的な調査研究を通して明らかにすることを目的とする。そのために、日本とともに、この種の共同養育がもっとも急速かつ広範に拡大しつつあるアメリカやオランダ等において現地調査を実施することとし、共同養育を実践する性的マイノリティ当事者や彼らを支援するNGO、法律専門家、さらには国境を越えて世界的規模で共同養育をアレンジないしコーディネートする共同養育斡旋会社等にインタビュー調査等を試み、新たな親子・家族・結婚観や制度の実態ないし可能性を実証的かつ理論的に検討することを目論んでいる。 研究計画初年度の2016年度は、本研究計画の第1段階として、関連著書や論文集、学術論文等の批判的検討を通して、性的マイノリティが実践する「共同養育」やその結果として形成される「拡大家族」(extended family)の概要を把握し、アメリカ並びにオランダでの現地調査に備えた。また、日本とアメリカの性的マイノリティ当事者並びに彼らを支援するNGO等に対して共同養育、拡大家族に関する情報を収集した。現在、そうした情報をまとめるとともに分析を加え、特にアメリカにおける「共同養育」や「拡大家族」の実態並びにそれらが親子や家族、結婚観ないし制度に及ぼす影響等に関する学会発表の準備を行うとともに論文作成に取組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定通り関連文献の収集や整理、理論的な検討等は順調に進み、性的マイノリティ(LGBTIQ)の新たな子どもの作り方ないし育て方、「共同養育」(co-parenting)に関する基礎的な情報の収集・整理はかなり進んだ。しかしながら、本「実施状況報告書」の「次年度使用額が生じた理由と使用計画」に記載しているような事情から、先行研究の批判的検討に基づいて提示した「作業仮説」(アメリカやオランダにおいて「共同養育」が拡大・浸透し、「拡大家族」も拡大している)を実証するために予定していたアメリカやオランダにおける現地調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本「実施状況報告書」の「次年度使用額が生じた理由と使用計画」に記載している問題点を克服し、関連文献から得られた性的マイノリティ(LGBTIQ)の新たな子どもの作り方ないし育て方、「共同養育」(co-parenting)に関する「作業仮説」を実証するための現地調査をアメリカないし/及びオランダにて早急に実施することとする。
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Causes of Carryover |
私は成城大学グローカル研究センターのセンター長を務めているが、グローカル研究センターを研究拠点とする成城大学の研究事業、「「持続可能な相互包摂型社会の実現に向けた世界的グローカル研究拠点の確立と推進」が2016年度の文部科学省補助事業、「私立大学研究ブランディング事業」(世界展開型)に選定されたことから、グロ-カル研究センター長として私は成城大学の上記研究事業の開始と推進にかなりのエネルギーを集中せざるを得ず、そのため本研究計画の実施に大幅なや遅れが生じ科学研究費補助金の一部を次年度使用額として申告せざるを得なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画開始第2年目の2017年度、当初の研究計画に追いつくべく、十分かつ適切なエネルギーを集中的に配分して研究を推進するものとする。特に、初年度(2016年度)に実施できなかったアメリカないし/及びオランダにおける現地調査を実施することにより、昨2016年度から繰り越した「次年度使額」を含めた今年度(2017年度)の研究費の配分額を適正に使用するものとする。
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