2018 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリアと日本における先住民族による流域資源保全に関する環境人類学的研究
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16K03246
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
友永 雄吾 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (60622058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 先住民族と人権 / 自己決定権 / 先住権原 / 先住民族と教育 / スタディツアー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は以下のことを実施した。 1.国内外の学会やシンポジュームでの発表 まず、①2018年12月5日にジャームズ・クック大学で開催されたAustralian Anthropological Societyのパネル“Fission and collision:disputation over native title boundaries and group membership”にて先住権原の承認と先住民代表機関の関係に注目した‘Disputaton after the Yorta Yorta Native Title case’を発表した。次いで、②2018年2月18日にInternational Workshop:Indigenous Peoples and Human Rightsを龍谷大学にて開催し、そこで尾本恵市東京大学名誉教授とフィリピンの先住民ママヌアのリーダーを招聘し、各自のテーマについて発表した。ここでは、オーストラリア先住民と開発に注目し、先住民の伝統知が近代知によって脅かされている事例について報告した。更に、③2018年2月21日には聖心女子大学にて開催されたRound Table Talks:Hunter-Gatherers of the World nowにて、‘Aboriginal people in Australia at present’を発表した。そこでは、オーストラリア先住民が近代化やグローバル化の影響で、3つの地理的な集団に区分されており、そうした各集団の権利状況について報告した。 2.出版物の公表 ①2018年2月に単著『スタディツアーの理論と実践:オーストラリア先住民との対話から学ぶフォーラム型スタで史ツアー』を明石書店から出版した。さらに、②2018年3月に論文「自己決定権と先住民」を『国際文化研究』23号に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.学会やワークショップでの発表 まず、①2018年12月5日Australian Anthropological Society2018の“Fission and collision:disputation over native title boundaries and group membership”にて‘Disputaton after the Yorta Yorta Native Title case’を発表した。次いで、②2月18日のInternational Workshop:Indigenous Peoples and Human Rightsを龍谷大学にて当該大学の研究機関であるアフラジア研究所と共催し、そこで‘Indigenous Australians and Human Rights’を発表した。最後に、③2018年2月21日に聖心女子大学にて開催されたRound Table Talks:Hunter-Gatherers of the World nowにて‘Aboriginal people in Australia at present’と題する発表をした。
2.出版物の成果 まず、①2018年2月28日に、報告者が2012年から堺市にて市在住の若者に、2016年からは龍谷大学の学生に対して実施するオーストラリア南東部でのスタディツアーについてまとめた単著、『スタディツアーの理論と実践:オーストラリア先住民との対話から学ぶフォーラム型スタで史ツアー』を明石書店から出版した。更に、②2018年3月10日に、オーストラリア先住民の土地権、先住権原、土地利用協定の管理と先住民代表機関の役割について注目した論文「自己決定権と先住民」を『国際文化研究』23号に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のさらなる研究の展開として、オーストラリア国立大学とメルボルン大学さらにジェームズクック大学を研究拠点に、これらの機関が「環境」、「教育」、「芸術」に注目して実施する先住民族の「伝統知」と「近代知」との相互作用に関するプログラムについて昨年度と同様に継続調査をする。具体的な方策は以下の通りである。
まず、①オーストラリア国立大学では、昨年度に引き続き2008年からオーストラリア南東部の国立公園で実施してきた先住民族と非先住民族との協同による環境管理の状況を把握する。このため本年度は、当該大学の研究者を龍谷大学へ招聘し環境管理のための知の相互作用について報告を受ける予定である。次いで、②メルボルン大学では、先住民族芸術を扱うWillinセンターの活動について同センター講師らが展開するオペラや舞台演劇、さらには映画などのビジュアル・アートを先住民族の口頭伝承と融合させ実施するプロジェクトについて継続調査する。更に、③当該大学にて先住民の研究者が継続するスタディツアーon country learningについて調査する。また、④ジェームズクック大学では、アボリジナル及びトレス海峡諸島民研究センターの教授らが2009年から国会図書館と共同で実施する、植民地期以降の先住民族に関する資料アーカイブ化の現状について継続調査する。 ⑤上記の成果を報告書として出版する。
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Causes of Carryover |
当初は日豪における先住民族コミュニティでの流域資源における環境管理の方法を、音による水質の変化に注目して解明する予定であったが、そのメカニズムの解明に時間がかかっている。このため、先住民族コミュニティでの実践例に注目することが十分にできなかった。また、2017年度に国際共同研究加速基金に採択されたことで、今後この基盤研究を更に発展させることが可能となる。こうした研究を発展させるためにも、今年度中に研究を修了させず、延長することを決断した。延長期間では、流域資源における環境管理の実践例について、先住民族当事者や研究者を招聘し、それぞれからの発表を受け、それらを日・英の報告書としてまとめ、公表する予定である。この招聘と報告書の作成に残額を充当する。
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