2018 Fiscal Year Research-status Report
英・米・日本における法律辞典の受容と変容――典拠と誤謬の法学史的系譜を中心に
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16K03252
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 孝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10241506)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法律辞典 / 英米法辞典 / law dictionary / ブラックストン |
Outline of Annual Research Achievements |
5年計画の3年目にあたる今年度は,わが国でかつて広く用いられた最初の本格的な辞典である『英米法辞典』(有斐閣1952年)を材料に,それがBallentine’s Law Dictionary(以下Ballentine’s と略す)およびBlack’s Law Dictionary(以下Black’s と略す)を参照する度合が特に強い項目を判別した上で一覧表化するための以下の作業を,昨年度に継続して行った。 昨年度までにおこなった研究計画調書に記した第一および第二の前提作業を受け,今年度は主として第三の作業,すなわち非常に基礎的で,かつ比較的古い歴史的基礎を有する用語のみを選別し,それに対する「参照度合の判別」に注力した。その結果,応募ファイルの研究計画の中で予想したとおり,同一名のlaw dictionaryが版を改めれば改めるほど,初期の版においては存在した典拠の注記が,後の版においては省略される傾向,つまり権威的法典籍の影響の不可視化傾向の存在が一層明らかになりつつある。 さらに,「研究目的」の4に対応すべく,各law dictionaryがまずは典拠として利用した,18世紀『釈義』等の叙述のさらなる系譜に追求に着手した。具体的には,17世紀のCoke,Institutes of the Lawes of England,15世紀のLittleton,Tenures,一層遡って13世紀のBracton ,De Legibus et Consuetudinibus Angliae,12世紀のGlanvil,Tractatus de Legibus et Consuetudinibus Regni Angliaeなどを中心として,『釈義』の文言が,したがってまた現代の法律辞典の少なからぬ文言が,これらの古典的な典籍の叙述に相当程度依拠している事実を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
厖大な分量のゆえに未だ上記の作業は未だその途上にあり,この研究本体に関する何らかの成果報告を執筆するには至っていないが,このことは当初から予定されており,研究計画自体は全く問題なく,これに費やすことができた時間に応じて着実に進行していると考えられる。 また上記『釈義』の書誌的系譜を追求する観点からの作業の中で,いわば副産物として,18世紀後半から19世紀前半にかけて『釈義』のさまざまな「分析(analysis)」がさまざまな編者により出版され,それがイギリスのみならず特にアメリカ合衆国の法学教育において初学者用のテキストとして非常に重宝にされた事実を挙げ,かかる「分析」の代表的な版の一部を邦訳してその特徴を示す論文を執筆した。これも昨年度の論文と同様に,我が国において初めての紹介であると思料される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,研究計画調書に記載した計画にしたがい,このまま着実に作業を進展させる。
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Causes of Carryover |
前年度に若干の未使用額が生じたが,今年度に十分に調整可能であり全額使用する予定。
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Research Products
(1 results)