2017 Fiscal Year Research-status Report
グラーティアーヌス教令集註釈書の史料学的・法文化史的研究
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16K03256
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
源河 達史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10272410)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 写本 / 史料伝承 / 教会法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心課題であるグラーティアーヌス教令集註釈書Summa Monacensis並びに類縁関係にある著作群(Summa Monacensisグループ)について、その断片を伝えるアッラス写本を調査したところ、Summa Monacensisの成立地を知る手掛かりとされた箇所(司教文書の書式例文)において、ミュンヘン写本との重要な相違が見い出された。すなわち、ミュンヘン写本においては例文に登場する人物が全てグルケ教会(チロル地方)と関りのある人物であるのに対し、アッラス写本では全てボローニャ教会(イタリア)と関りのある人物になっていた。そこで、アッラス写本に登場する人物たちを、司教文書を中心とするボローニャ教会史料に基づいて調査したところ、1169年と1187年の間にボローニャ教会と関わりのあった人々であること、アッラス写本の内容もこの時期のものであること、が分かった。 次に、オクスフォード大学図書館所蔵の写本の欄外に書き込まれた註釈を、Summa Monacensisグループに属する諸著作と詳細に比較したところ、同じグループに属する新しい史料であること、1170年代半ば、フランスで神学を学んだ学生がイングランドに持ち帰ったものと考えられること、が判明した。 以上の成果を、1160年代から1180年代にかけての北フランスにおける教会法学の展開を示す知見として、研究報告"The Development of an Early French School of Canon Law from the 1160s to the 1180s"として、Leeds International Medieval Congress(2017年7月5日、英国)にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上に述べた学会報告(2017年7月5日)の後、ゲッティンゲン大学(ドイツ)に所蔵されている写本MS jur. 159(翻刻で約350頁)を調査したところ、ボローニャ(イタリア)の教会法学の摂取方法において、Summa Monacensisグループの特徴を知る上で重要な比較対象となる史料であると思われた。そこで、2018年10月以降、研究対象を広げ、同写本に伝えられたグラーティアーヌス教令集註釈書Summa Antiquitate et temporeを集中的に研究し、Summa Monacensisグループとの比較を試みることとなった。このため当初の予定より遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲッティンゲン大学所蔵写本に伝わるSumma Antiquitate et temporeとSumma Monacensisグループとの比較を行い、本年度6月、7月に研究報告を行う(アイルランド、イングランド)。同研究報告を、昨年度の研究報告と合わせて研究論文として発表するとともに、Summa Monacensisグループの著作について、今年度中の刊行開始を目指す。
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Causes of Carryover |
学会報告のための渡航費用について、野村財団の助成金を得ることができたため、当該次年度使用額が生じた。 今年度も写本調査のため渡航することを予定しており、そのための旅費として使用するほか、資料購入、成果発表のための資金として使用する。
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Research Products
(1 results)