2016 Fiscal Year Research-status Report
清代後半における官契紙による契約および土地所有権秩序に関する実証的研究
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16K03269
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
鈴木 秀光 専修大学, 法学部, 教授 (30361059)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国法制史 / 官契紙 / 契約 / 所有権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、官契紙普及の時期的および地域的な広がりとその機能の解明、そして官契紙普及を前提とした所有権秩序の在り様を模索することである。初年度にあたる平成28年度は、官契紙使用の契約文書史料を用いた形での研究手法を構築することと、官契紙を収集して分析することを行なった。 このうち前者に関しては、まず官契紙の書式に着目し、単に「官契紙」などと印刷されてそれが官契紙であることが判明するものと、それ以外に県の告示などさらなる情報が掲載されているものとに区分した。そしていずれも場合でも、それが用いられていた州や県の地方志などにあたって、関連する情報の有無を調査することとした。またさらなる情報が掲載されている官契紙の場合については、特にそれがどの地方官の時のことであるかを調査し、官僚の手記などにもあたることによって、地方官の人物像や官契紙導入の背景なども併せて検討することとした。またこうした官契紙に関する調査と並行して、地方官の手引書である官箴書や当時の成文法なども調査し、関連する項目や記事を併せて検討することとした。 後者に関しては、本研究申請の段階において入手不能と思われていた大部の史料集が入手可能であることが判明したため、当初予定していた国内外の出張調査をすべてとりやめて、急遽これを購入することとした。そして上記研究手法を用いてその収録内容の分析を進めたが、大部の史料集であることから、平成28年度ではそのすべてを分析するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の課題であった研究手法の構築については、今後必要に応じて修正することがあり得るものの、ひとまずは達成したと考えている。史料の収集・分析については、入手した史料集に収録されているものを中心に順次進めている。研究代表者の所属機関が平成29年度から変更になったことから、平成28年度の後半期は当初予定していたほどの研究時間を確保することができなかったが、大部の史料集を購入できたことで史料収集に要する時間を節約できたことから、全体としては当初の計画がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の二年目となる平成29年度は、前年度と同様、官契紙使用の契約文書史料やそれに関連する地方志、官僚の手記、官箴書、成文法などの収集・分析を行なう。購入した史料集を中心に分析を進める一方、前年度は予定していた海外での調査をとりやめたことから、今年度は中国および台湾における調査を実施することとする。また国内については、研究代表者の所属機関が関東から関西に移ったことから、必要に応じて関東方面での調査を実施する。また史料の収集・分析と並行して、必要に応じて研究手法の修正も行うこととする。 平成29年度の後半期においては、前半期と同様に史料の収集・分析を進める一方で、官契紙の普及状況やその機能など本研究の中間的内容をとりまとめ、機会があれば研究会等で報告することを考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、本研究申請の段階において入手不能と思われていた大部の史料集を急遽購入したが、その費用に関しては、「物品費」に計上されている金額を充当したほか、不足分を出張調査をすべてとりやめることによってその「旅費」を「物品費」に充当することで対応した。「次年度使用額」は、「旅費」を「物品費」に充当した残額として生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、引き続き関係史資料を購入するほか、出張調査を予定している。出張調査は平成28年度に行わなかった分も併せて行なう必要があるため、「旅費」は当初の予定額よりも多くなることが想定されるが、その増加分として「次年度使用額」を充当することを考えている。
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