2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03270
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高 友希子 法政大学, 法学部, 教授 (40454962)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大法官府裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、すでに大法官府裁判所におけるエクイティ裁判権の形成および展開、信託(ユース)の役割について、論文をまとめたことがあり、かねてより大法官府裁判所とエクイティの関係について研究を進めてきた。しかしながら、大法官府裁判所における商業事例については、それほど多くの判例を調査しておらず、手薄な状態であった。そこで平成28年度の研究実施計画に沿って、大法官府裁判所における商業事例について刊行資料を中心に調査・検討を行い、以下のことが明らかになった。(1)商業事例については、一般に、市場が開設される都市の裁判所や往来の激しい行商人が利用した埃足裁判所などが対応していたと言われているが、数こそ多くはないものの、大法官府裁判所においても処理されていたこと。(2)外国人商人が関与する事件について、大法官府裁判所が対応している事例があること。(3)外国との国際取引に関わる事件について、大法官府裁判所が処理していた事例があること。(4)海事高等裁判所が管轄すると思われる事件についても、大法官府裁判所が対応している場合があること。(5)信託(ユース)は、宗教的異端を理由とする財産没収を回避する手段、婚姻により法的無能力者となる既婚女性が財産を保有する手段、相続権のない子供に財産を継承させる手段のほか、債務を弁済する手段であったこと。特に、商業活動の場面において、債務を弁済する手段として利用されていたこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画のとおり、大法官府裁判所における商業事例について、法的な資料を中心に検討を行った。現時点では刊行資料の調査を継続している状況であり、未刊行の状態にある一次史料については、調査を開始するに至っていない。というのも、該当判例について、刊行資料だけでも相当な量が存在することが分かったからであり、それを丁寧に調査していたところ、当初予定していたよりも遥かに時間がかかっている状況だからである。また、平成28年度は、法的な資料を中心に検討を進めたため、政治、経済、社会との関連資料の調査・検討についても、当初の予定よりは遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成28年度から継続している、大法官府裁判所における商業事例の検討を進める。(2)土地法に言及した、セント・ジャーマンのDoctor and Student(『神学博士と法学徒』)第二部を精査する。(3)16,17世紀の法学文献の検討を通じて、セント・ジャーマンによるエクイティ思想の普及状況を確認する。(4)セント・ジャーマンがトマス・モアとの間で交わした論争について、両者の著作の解読を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも資料の分析に時間がかかったため、新たな資料を収集しに行く予定が消化できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに手元に収集済みの資料の分析を早期に終わらせて、新たな資料の調査・収集を行う予定である。
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