2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03277
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
小林 昌之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (60450467)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 障害 / 障害法 / 中国法 / 障害者権利条約 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国の地方における障害者の権利保障法制の形成に焦点を当てる。具体的には、障害者権利条約の核心である差別禁止ならびに重要分野である教育および労働の諸規定を基準に、地方政府が制定する地方性法規を分析し、障害者の権利実現の課題を明らかにすることを目的とする。 初年度である2016年度においては、論文などの文献調査のほか、北京市、上海市、広東省など地方レベルの障害者連合会のウェブサイトで公開されている地方性法規および政策などを収集し、整理を行った。地方レベルの法規は、法律よりも規定内容が詳細になることで、適用対象となる障害者の範囲を広げる傾向がある一方、そこに入らない障害者に対する異なる扱いは「区別」として合理化されようとしていることなどの示唆があった。 地方性法規の制定に関しては、研究代表者が参加する学会(アジア法学会)の10月の研究会において、中国の立法法研究者から2015年改正における「地方分権」の考え方を学ぶと同時に、障害分野に対する地方政府の役割について意見交換を行った。また、障害者権利条約の国内的実施に関しては、12月に北京で行われた、ASEM非公式人権セミナー「人権と障害者」にオブザーバーとして参加し、中国政府、中国障害者連合会および国際的障害当事者団体の見解を聴取することができた。しかしながら、中国の障害当事者の参加はほぼ皆無であったため、次年度、インタビューを実施する予定である。障害者権利条約は「私たち抜きに、私たちのことを決めないで(Nothing without us、 without us)」ということを基本理念にし、締約国にも障害当事者の意思決定過程への参画を要請している。中国は、中央・地方の政策立案・立法過程への障害当事者の参画をどのように考えているのかも、論点のひとつとして留意し、分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2016年度中に、本科研による中国の現地調査を実施する予定であった。しかし、広東省など地方での受入予定機関とのスケジュール調整が難航したこともあり、実施は2017年度の前半に行うことになった。ただし、障害者権利条約の国内的実施など中央に対する聞き取りは、ASEM非公式人権セミナーなどへの参加の機会を得て、部分的に実施することができている。 現地調査以外の作業は、順調に進んでいる。地方性法規については、地方政府または障害者連合会系列のウェブサイトから入手し、対象地域としている北京市、上海市、広東省の障害者連合会の内容については整理が進んでいる。ただし、ウェブサイト以外にも、地方では印刷した政策法規資料集が内部用に発行されている可能性があるので、正確性の確認のために、2017年度、現地で入手を試みる予定である。 本科研との関係で、中国政府による障害者権利条約の国内的実施についての原稿執筆を進めており、2017年度中に研究成果の一部として公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に実施を計画していた本科研による中国への現地調査は、2017年度の前半に実施する。官製の障害者連合会以外の障害当事者団体へのインタビューを進めるために、研究過程で情報を得た、草の根の障害当事者の活動が比較的活発である地方への現地調査を加えて実施する予定である。また、2017年度には、北京において、アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)の中間レビューが予定されているので、この機会をとらえ、地方政府と障害者連合会の国際的アジェンダとのかかわり、ならびに、そのプロセスへの障害当事者の参加の現状について観察したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画にあった、2016年度中の中国の現地調査が、広東省など地方での受入予定機関とのスケジュール調整が難航したことにより未実施となっているため、繰り越しが生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に未実施であった広東省への現地調査は、2017年度の前半に実施する。そのほかは、2017年度の当初計画に基本的に従う。現地調査として、草の根の障害当事者活動を調査するため、武漢市など地方を訪問するとともに、現地の研究者とのワークショップを計画している。また、11月に北京で予定されているアジア太平洋障害者の10年(2013-2022)の中間レビュー会合への参加を模索している。資料収集も引き続き行う。
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