2017 Fiscal Year Research-status Report
「制度」と表現の自由・学問の自由との関係についての理論的再検討
Project/Area Number |
16K03279
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中林 暁生 東北大学, 法学研究科, 教授 (70312535)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 制度 / 表現の自由 / 公立図書館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アメリカ憲法学における「制度理論」の研究を行うことを通じて,図書館や大学などの「制度」と表現の自由論・学問の自由論についての理論的な再検討を加えることを目的としている。 本年度は,公立図書館に関する研究を行った。公立図書館とパブリック・フォーラム論との関係についての考察は,「制度理論」の意義を考える上で重要な意味を持っている。そこで,本年度は,この問題についてのアメリカにおける判例・裁判例の研究を行い,公立図書館をパブリック・フォーラムと捉えることの意義および限界について検討した。次に,以上の検討を踏まえつつ,船橋市西図書館事件最高裁判決(最一小判2005年7月14日民集59巻6号1569頁)についての研究を行った。同判決は,「公立図書館は,住民に対して思想,意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場ということができる」と述べ,さらに,「公立図書館が……住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは,そこで閲覧に供された図書の著作者にとって,その思想,意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる」とも述べていたが,そこでいう「公的な場」と「パブリック・フォーラム」との関係についての考察を行うことは,本研究を進めていく上で重要であると考えたからである。以上の研究の成果の一部を,「憲法と公立図書館との関係についての予備的考察(1)」として公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公立図書館とパブリック・フォーラム論との関係についての研究は,本研究を進めていく上でも重要な意味を持っている。この研究は比較的順調に進展したといえるが,次年度に少し積み残すこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,公立図書館についての研究を継続する一方,本研究の総括も行う。
|
Causes of Carryover |
当初は,アメリカ合衆国の議会図書館へ資料収集に行くことを予定していた。しかしながら,研究の進捗状況を踏まえると,次年度に行く方がより高い成果を得られると考えられたので,そのための旅費を次年度に繰り越すことにした。
|