2017 Fiscal Year Research-status Report
公務員法における法治主義原理のあり方に関する研究--フランス法理論を参考に
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16K03280
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
下井 康史 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (80261262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公務員法 / フランス官吏法 / 法治主義原理 / 法律の留保 / 公務員争訟手続 / 行政争訟 / 行政訴訟 / 行政規則 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度も、前年度に引き続き、まず、公務員法の特殊性を踏まえた法律の留保理論の修正という視点から、我が国の公務員法理論を精査した。この点に関連する本年度の成果は、「日々雇用公務員に支給される離職せん別金に充てるための補助金支出と給与条例主義」ジュリスト1505号(2019年)54-55頁、「特別職非常勤職員」自治実務セミナー659号(2017年)56-60頁、「外国人の公務就任能力」同662号(2017年)38-43頁、「公務員勤務関係の法的性質」同663号(2017年)30-35頁、「採用の取消し」同666号(2017年)46-51頁、「条件付採用職員の分限免職」同667号(2018年)34-39頁、「公務員法の課題----職務命令に対する服従義務について」行政法研究20号(2017年)139-150頁、「公務員の勤務関係」宇賀克也他編『行政判例百選Ⅰ(第7版)』(有斐閣、2017年)18-19頁、「公務員の退職願の撤回」同258-259頁、「公務員労働組合事務所としての庁舎使用の不許可について」北村喜宣他編著『自治体政策法務の理論と課題別実践』(第一法規、2017年)355-369頁がある。 また、法治主義の実現には適切な争訟法制の整備が必要という学界の共通認識に基づき、行政争訟法制全体を視野に入れつつ公務員争訟手続のあり方を検討したものとして、「欠格条項と自動失職」自治実務セミナー661号(2017年)44-48頁、「採用内定の取消し」同664号(2017年)48-53頁、「任期付任用職員の再任用(その1)」同668号(2018年)44-50頁がある。 次に、フランス官吏法についての研究成果は未公表であるが、前年度に引き続き、2016年に改正された官吏法制の内容を精査しつつ、同改正の理論的背景を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フランス法を参照しつつ、立法論と解釈論のいずれをも嚮導し得る、法治主義原理を踏まえた公務員法の基礎理論を再構築しようとするものであり、具体的には、法律の留保について、公務員法における留保の範囲如何、及び、留保事項における法律の規律密度のあり方を検討し、併せて、公務員法における行政規則の裁判規範性承認の可否を、そして、承認できるものがあるとして、その範囲や効果を考察しようとするものである。 かかる目的の下、平成29年度は、日本法については、(1)必要的法律事項・任意的法律事項・(必要的)協約事項の振り分けの基準、及び、(2)行政争訟法制全般を視野に入れた公務員争訟法制の検討を行うとともに、(3)公務員法における行政規則の法的性質に関する解釈論的研究を、フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、日仏における法律規律事項との比較を試みることを、それぞれ予定していた。 このうち日本法については、上記(1)~(3)のいずれについても、その考察にあたっては、現行実定公務員法における解釈論上・法制度上の問題点を発見をすることが不可欠であり、また、行政法総論理論及び行政争訟法制全体を視野に入れた検討が必要であるという認識のもと、公務員法における一定の論点につき、(1)~(3)の観点を踏まえた考察を行い、その成果を公表することができた。 フランス法についても、従来の研究によって得られた知見を基に、官吏法の具体的内容を分析した。とりわけ、2016年に、フランス官吏法が大きく改正されたため、その内容を精査しつつ、同改正の理論的背景を検討した。 以上のことから、研究の目的はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降の研究推進予定は以下の通りである。 まず、日本法については、引き続き、(1)公務員法における必要的法律事項・任意的法律事項・(必要的)協約事項の振り分けの基準、(2)行政争訟法制全般を視野に入れた公務員争訟法制の検討、及び、(3)公務員法における行政規則の法的性質に関する解釈論的研究を、フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、日仏における法律規律事項との比較を試みることを行う。いずれについても、行政法総論理論全般及び行政争訟法制全体を視野に入れた考察となる。 上記(1)~(3)のうち、平成30年度においては、平成29年度から開始した(2)についての検討に重点をおく。その際、公務員法のみならず、行政法一般における行政規則論も視野に含める。これは、行政法総論における行政規則論の分析を踏まえた、公務員法の特殊性を踏まえた行政法総論理論の修正という視点から、公務員法における行政規則のあり方を考察する研究という意味がある。 フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、とりわけ、2016年改正官吏法の影響や、同改正の問題点について、学説判例の動向を考察を継続する。とりわけ、上記(3)の深化に合わせ、フランスにおける行政規則論の分析に注力し、かかる行政規則論が、公務員法においてどのように位置づけられているかを考察する。
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