2018 Fiscal Year Research-status Report
公務員法における法治主義原理のあり方に関する研究--フランス法理論を参考に
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16K03280
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
下井 康史 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (80261262)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公務員法 / フランス官吏法 / 法治主義原理 / 法律の留保 / 公務員争訟手続 / 行政争訟 / 行政訴訟 / 行政規則 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も、前年度に引き続き、まず、公務員法の特殊性を踏まえた法律の留保理論の修正という視点から、我が国の公務員法理論を精査した。この点に関連する本年度の成果として、「給与条例主義」自治実務セミナー671号(2018年)48頁-53頁、「人事委員会の給与勧告」同673号(2018年)44頁-50頁、「勤務条件措置要求」同674号(2018年)44頁-49頁、「政治的行為の制限」同680号(2019年)58頁-63頁、「同労働基本権の制限」同682号(2019年)42頁-47頁がある。 また、法治主義の実現には適切な争訟法制の整備が必要という学界の共通認識に基づき、公務員法における争訟手続の在り方を検討したものとして、「人事評価」自治実務セミナー676号(2018年)42頁-47頁、「転任」同677号(2018年)30頁-35頁、「職務命令」同679号(2019年)42頁-48頁がある。なお、「地方公務員の失職特例条例について--争訟手続のあり方に着眼して」碓井光明=稲葉馨=石崎誠也編『行政手続・行政救済法の展開』(信山社、2019年)と「公務員に対する職務命令の処分性」上智法学論集62巻4号(2019年)は、2019年5月に公表される予定だが、いずれも2018年度中に執筆したものであり、本年度の助成の成果である旨を記載している。 次に、フランス官吏法についての研究成果は未公表であるが、前年度に引き続き、2016年に改正された官吏法制の内容を精査しつつ、同改正の理論的背景を検討するとともに、公務員法以外の行政法分野にも視野を広げ、わが国の行政規則理論に相当する法理論を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フランス法を参照しつつ、立法論と解釈論のいずれをも嚮導し得る、法治主義原理を踏まえた公務員法の基礎理論を再構築しようとするものであり、具体的には、法律の留保について、公務員法における留保の範囲如何、及び、留保事項における法律の規律密度のあり方を検討し、併せて、公務員法における行政規則の裁判規範性承認の可否を、そして、承認できるものがあるとして、その範囲や効果を考察しようとするものである。 かかる目的の下、平成30年度は、日本法については、(1)公務員法における法律・条例による規律の在り方とその解釈の在り方、及び、(2)行政争訟法制全般を視野に入れた公務員争訟法制の検討を行うとともに、(3)公務員法における行政規則の規律の在り方及びその解釈の在り方に関する研究を、フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、日仏における法律規律事項との比較を試みることを、それぞれ予定していた。 このうち日本法については、上記(1)~(3)のいずれについても、その考察にあたっては、現行実定公務員法における解釈論上・法制度上の問題点を発見をすることが不可欠であり、また、行政法総論理論及び行政争訟法制全体を視野に入れた検討が必要であるという認識のもと、公務員法における一定の論点につき、(1)~(3)の観点を踏まえた考察を行い、その成果を一定程度まで公表することができた。 フランス法についても、従来の研究によって得られた知見を基に、官吏法の具体的内容を分析した。とりわけ、2016年に、フランス官吏法が大きく改正されたため、その内容を精査しつつ、同改正の理論的背景を検討した。 以上のことから、研究の目的はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度以降の研究推進予定は以下の通りである。 まず、日本法については、引き続き、(1)公務員法における必要的法律事項・任意的法律事項・(必要的)協約事項の振り分けの基準、(2)行政争訟法制全般を視野に入れた公務員争訟法制の検討、及び、(3)公務員法における行政規則の法的性質に関する解釈論的研究を、フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、日仏における法律規律事項との比較を試みることを行う。いずれについても、行政法総論理論全般及び行政争訟法制全体を視野に入れた考察となる。 上記(1)~(3)のうち、平成31年度においては、同30年に引き続き、平成29年度から開始した(2)についての検討に重点をおく。その際、公務員法のみならず、行政法一般における行政規則論も視野に含める。これは、行政法総論における行政規則論の分析を踏まえた、公務員法の特殊性を踏まえた行政法総論理論の修正という視点から、公務員法における行政規則のあり方を考察する研究という意味がある。 フランス法については、官吏法の具体的内容を分析し、とりわけ、2016年改正官吏法の影響や、同改正の問題点について、学説判例の動向を考察を継続する。とりわけ、上記(3)の深化に合わせ、フランスにおける行政規則論の分析に注力し、かかる行政規則論が、公務員法においてどのように位置づけられているかを考察する。
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