2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03281
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増井 良啓 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90199688)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 租税手続法 / 国際課税 / 脱税 / 個人情報 / 情報交換 / 租税条約 / 欧州人権条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従って,次の3つの作業を同時並行的に進めました。 *国際的フォーラムの動向の巨視的分析。移転価格の国別情報申告(Country-by-country reporting)に関する報告書や,紛争処理手続に関する報告書など,BEPSプロジェクトにおける租税手続法関連の文書を検討しました。また,論文「国際課税における手続の整備と改革」日税研論集70号515-580頁(2017.01)において,国際的フォーラムにおけるとりくみの概要を整理し,国際公法との関係を意識しつつ,紛争処理メカニズムの未発達のゆえにいまだ枢要な点において国際課税レジームの形成には至っていないことを示しました。 *租税条約上の制度の個別的分析。租税条約に基づく自動的情報交換について,欧州司法裁判所のSabou事件以降の議論の状況を,欧州人権条約との関係で実際の裁判例をもとに実証的に明らかにし,論文「課税情報の交換と欧州人権条約」法学新報123巻11・12号333-356頁(2017.03)(玉國文敏先生古希記念)にまとめました。 *国内法上の制度の横断的分析。盗難データの利用可能性について,刑事法における証拠排除の議論や,租税条約等実施特例法の解釈など,日本法の状況を横断的に検討する作業をはじめました。この期間に公表したものとして,論文「租税手続法の国際的側面」宇賀克也・交告尚史編『現代行政法の構造と展開 小早川光郎先生古稀記念』199-214頁(2016.09)があります。同論文において,情報交換に際して関係者に通知を行うべきことや,私人による情報収集は違法であるものの課税当局は合法的にその情報を入手した場合,特段の事情がある場合を除き,情報の使用を認めてしかるべきであることなどを論じました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた3つの作業を同時並行的に行うことができ,この年度内に3つの論文(いずれもクレジット付き)として公刊することができました。とくに,この年度の当初(2017年4月)にパナマ文書が公表され,この問題領域に関する関心が高まったことから,研究の遂行には好適な環境を享受できたことは幸いでした。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のとおり,国際的フォーラムの動向の巨視的分析,租税条約上の制度に関する個別的分析,国内法上の諸制度の横断的分析,の3つの作業を進めます。 *国際的フォーラムの動向の巨視的分析については,平成28年度の作業を進めるとともに,新しい動向を継続的にフォローします。 *租税条約上の制度に関する個別的分析については,平成28年度の作業を進めるとともに,新しい動向を継続的にフォローします。 *国内法上の諸制度の横断的分析については,マネロン規制との関係について,検討を継続します。平成29年度税制改正において,国税犯則取締法の内容が現代化されて国税通則法に取り込まれましたので,その改正との関係についても検討したいと考えています。
|
Causes of Carryover |
書籍の発注が年度をまたぎました。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度当初の書籍購入に充てます。
|
Research Products
(4 results)