2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03294
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
新井 信之 香川大学, 法学部, 教授 (80249672)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 欧州連合(EU) / 移民法 / 外国人 / テロリズム / 難民 / 退去強制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、昨今の喫緊の課題である外国人が関与するテロリズムに対して欧州連合(EU)の法(EU法)がどのように対処しようとしているかについて日米との比較を念頭に、以下のような学術調査を実施し、今年度においても一定の研究成果を上げることが出来た。 まず第一に、今年度は、昨年度の「EU条約」「EU運営条約」「EU基本権憲章」の三つの基本条約を一括して翻訳して公表(香川法学第35巻4号)した研究実績を基礎として、欧州連合(EU)の憲法ともいえるこれらの基本条約について、とくにテロ・難民に関わる移動の自由と人権保障を意識してまとめた研究成果を公表(『世界の憲法集〔第5版〕』有信堂、2019年12月刊行)することが出来た。 また、昨年に引き続き欧州連合(EU)の外国人テロリストとEU移民法に関する事柄について、チェコにおいて学術調査を実施し、情報の収集とともに現地の関係者との情報分析および意見交換をすることが出来た。ここでは、プラハ・カレル大学法学部および同人文学部、欧州連合(EU)の政府関係者らから多くの学術的知見を得て、彼らとともに欧州連合(EU)におけるテロ・難民についての法的な枠組みの分析・共同研究を実施し、本研究に必要な情報および意見交換をした。 さらにこれらの研究成果について、今年度は「欧州連合の基本法としての諸条約の枠組みと移動の自由」というテーマで研究会において報告することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまでの3年間において、国内外における研究調査活動、情報収集および意見交換、 研究成果の発表をおおむね順調におこなうことが出来ている。 初年度よりヨーロッパ各国およびEUに関する新しい文献資料を収集するとともに、外国人テロリストとEU移民法に関する事柄について、ベルギー、オランダ、ドイツ、チェコにおいて各国の関係者らとともに情報分析・共同研究を実施した。また、テロと難民に関する国際学会へ出席して、欧州連合(EU)以外の国の研究者たちと 情報および意見交換をすることが出来ている。これらの研究成果については、外国人の出入国と在留研究グループのみならず、さまざまな領域の研究者・実務家との意見交換をおこなっている。 平成29年度においては、とくにチェコのプラハ・カレル大学関係者との新たな共同研究体制を確立し、研究者のみならず実務に携わる政府関係者からの情報収集・意見交換のための貴重なネットワークを立ち上げることができた。 さらに平成29年度から平成30年度にかけては、これらの研究調査によって得られた情報・資料を分析し、テロ・難民に関する欧州連合(EU)の法についての基本的な枠組みの研究成果を徐々に公表することができるようになった。それにより欧州連合(EU)における出入国管理法制の比較のための基礎的な研究成果が積み上がってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、日本における外国人テロリスト等に対する出入国管理強化とともにそれとは区別されるその他の外国人の人権保障についての提言をおこない、併せて、欧米の研究機関および研究者と連携し、欧州連合(EU)において統一されつつある出入国管理法制について全体としてのEU法研究の体系化の一端を担うべく先駆的な研究の推進を心掛け実施するものであるが、これまでの研究成果から得られたのは、外国人テロリストと大量難民の発生および移動の自由との関連性が新たな問題として浮上してきたことであった。 これについては、欧州連合(EU)の基本条約における移動の自由、テロ・難民に対する法的な枠組みを検証し、研究成果として積み上げてきた。科学研究費補助金・ 基盤研究(C)(平成24~27年)による研究成果の一部である拙論「EU移民法研究序説-日米の比較を踏まえて-」(香川法学第34巻3・4号)との関連を踏まえて、本研究課題についての核心部分をいよいよまとめていく段階に入っている。 さらには、本研究課題の推進については、ヨーロッパおよび日米のみならずアジア諸国におけるテロ・難民の出入国規制との比較も視野に入れながら、喫緊の重要な課題として最終的な研究成果を取りまとめていきたいと考えているところである。
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Causes of Carryover |
図書の購入を計画している。
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Research Products
(2 results)