2019 Fiscal Year Annual Research Report
Human Rights and Judicial Review toward Constructing Deliberative Democracy
Project/Area Number |
16K03299
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
平地 秀哉 國學院大學, 法学部, 教授 (70339662)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法学 / 熟議民主政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究目標のうち、①熟議民主政における市民参加の実践的状況と、②熟議民主政論についての最先端の議論状況についての研究を行った。 まず、①については、熟議民主政の理論面・実践面について、アメリカ合衆国の首都ワシントンにおいて調査を行った。具体的には、アメリカ連邦議会図書館及びジョージタウン大学図書館において、アメリカの連邦レベルにおける熟議民主政の歴史と現況に関する資料の閲覧を行った。世界最古の立憲民主主義国であり、また連邦レベルで扱う立法・政策案件が数多いこともあって、当地には民主政の実践に関する膨大な資料が保存されており、これらを十分に咀嚼し、研究成果につなげるには閲覧・整理の期間をさらに要することが判明した。 ②については、研究最終年度ではあるが、熟議民主政の理論的研究に新たな分析視角を取り入れることとした。というのも、近年、欧米を中心にポピュリズム政治が急速に隆盛を極めており、熟議民主政論もこの傾向と向き合わざるを得ない状況となっているからである。研究者の比較対象国であるアメリカ合衆国においても、ポピュリスト的と言われる大統領が誕生し、その政権に対する評価も出そろいつつあるところ、ポピュリズムと熟議民主政の理論的関係について研究を行い、両者は全面的に相いれないわけではなく、理論的に対立するのは市民の自由や平等に対する理解であり、市民の意思による政治の実現というレベルでは通底する部分さえあることが判明した。また他方で、アメリカにおいて「ポピュリスト憲法学」と呼ばれる一連の議論の調査も行い、その一人であるイエール大学のブルース・アッカーマン教授の“We the people: Foundations”(Harvard University Press, 1991)を研究・翻訳するプロジェクトにも参加し、その一部(第9章)の翻訳を担当した。
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