2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03301
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 日本大学, 法学部, 教授 (90432179)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 憲法 / 裁判員制度 / 弾劾制度 / 国民主権 / 民主主義 / 自由主義 / 司法権 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまで裁判員制度について多くの論文等を発表してきたが、同じく刑事司法における国民の参加の制度である検察審査会制度については、実質的な検討を行ってこなかった。そこで、「討議民主主義理論に基づく検察審査会制度の意義の再構成 試論」において、検察審査会制度の意義について討議民主主義理論の見地から検討することとした。 「国民の司法参加の制度における協働と討議の重要性」と、日本政治学会における発表「国民の司法参加の諸制度とそれを正統化するための政治原理」は、わが国における国民の司法参加の制度一般がどのような原理によって基礎づけうるかについて検討するものである。特に、これまで国民の司法参加として理解されてこなかったさまざまな仕組みを、司法参加の制度と定位すべきと主張するとともに、民事司法における国民の参加の制度に関して、その多様な形態を概説したうえで、その意義について分析した。 「裁判員制度の意義と展開可能性――続々・裁判員制度の憲法適合性」は、最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁を契機に、そこで制度導入の趣旨として挙げられた憲法の基本的原理をめぐる議論と、制度の意義から示唆されるところの制度の展開可能性をめぐる議論の2つについて取り組んだものである。「国民の司法参加」は、裁判員制度が主権者国民の絶対的な意思をもって法律専門家の判断を排除ないし統制しようとするものではなく、法的専門合理性と調和的に民主的正統性を獲得することを企図するものであることを明らかにするものである。 そのほか、日本及びアジアにおける憲法学の最新の議論状況を紹介するべく、欧文論文2件を国際ジャーナルに掲載するとともに、国際学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、雑誌論文4件(邦文2件、欧文2件)、図書(分担執筆)4件(いずれも邦文)、学会発表2件(国内学会1件、国際学会1件)を公表した。 そのうち、特筆すべきものは、平成28年度の日本公法学会第2部会における報告内容を論文としてまとめた「国民の司法参加」を『公法研究』に掲載していただいたことである。また、平成29年度は、日本政治学会においても報告の機会をたまわった。本研究の期間中に社会科学系の国内最高峰の2つの学会で報告の機会に恵まれたことは、大変にありがたいことであったが、研究代表者としては、憲法研究者としてさらなる一歩を進めたいと考えており、進捗状況についての自己評価としては敢えて上記のとおりとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで、継続的に、邦語での論文公表・学会発表のほかに、欧文論文の公表及び国際学会での発表を行ってきたが、今年度に関しては、欧文によるものは原著論文ではなく書評論文にとどまった。そこで、平成30年度は、邦語論文のみならず、欧文論文についても、原著論文を公表することとしたい。 裁判員制度に関しての研究は着実に進めており、平成30年度においても、裁判員裁判の判決に対する上訴をめぐる憲法問題について検討することを予定している。具体的には、裁判員の参加した裁判を職業裁判官のみで構成される裁判体で破棄しうることの正統性に関して、控訴審の審査のあり方の一般論、事実誤認を理由とする控訴に対する控訴審のあり方、量刑不当を理由とする控訴に対する控訴審のあり方の3点に分けて、論文を公表することとしたい。 平成29年度は、新たに、裁判員制度以外の国民の司法参加の制度の検討にも着手することができた(その成果の1つである日本政治学会における発表については、平成30年度中に論文化して公表することを予定している)。その一方で、弾劾制度についての研究が滞り、研究成果の公表には至らなかったため、平成30年度は、弾劾制度に関する研究成果の発表に注力したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)計画的な使用に努めたが、端数が生じた。 (使用計画)次年度の経費と合わせて、次年度の研究をさらに充実させるために使用したい。
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Research Products
(10 results)