2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03303
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
徳永 貴志 和光大学, 経済経営学部, 准教授 (50546992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政府の憲法解釈 / 議会の憲法解釈 / コンセイユ・デタ / 憲法院 / フランス首相府 |
Outline of Annual Research Achievements |
政府の憲法解釈の動態を解明するために、平成28年度は、日本及びフランスにおける政府の憲法解釈の生成過程、そして憲法解釈をめぐる政府・裁判所・議会の相互作用に関する基礎的な文献・資料の収集・調査を中心に、研究基盤の確立と問題の所在の確認作業を行った。また、それと並行して以下のような研究会および聞き取り調査を実施した。 ①2016年7月30日に慶應義塾大学(三田キャンパス)において研究会を実施した。本研究会では、研究分担者である奥村公輔氏(駒澤大学)が「フランスにおける憲法解釈機関としてのコンセイユ・デタ行政部」と題する報告を行い、横大道聡氏(慶應義塾大学)から、考察の枠組み・今後の研究の進め方等についてコメントをいただいた。 ②議会における憲法解釈の動態を調査するため、2016年12月7日・8日にフランス議会上下両院で開催されたシンポジウムに参加した。また、本シンポジウムに参加していたフランスの複数の憲法学者にヒアリングを実施し、本研究課題の考察に必要な情報の収集を行うとともに、仏政府への聞き取り調査の方針・内容についてアドバイスを受けた。 ③2017年3月27日にフランスのコンセイユ・デタを訪問し、内務部会副部会長及び訴訟部判事にヒアリングを実施した。彼らからは、コンセイユ・デタが日常的に政府との間で憲法解釈をめぐってどのようなやり取りを行っているのか詳細に聞くことができた。続いて、2017年3月28日にフランス首相府を訪問し、内閣事務総局副事務総長にヒアリングを実施し、首相府と大統領府や行政各部とのやりとり等、執行府内部における憲法解釈の生成プロセス、あるいは、憲法院判決や議会との相互作用について有益な情報提供を受けた。 平成28年度の主な研究成果としては、研究代表者・分担者がそれぞれ執筆した、山本龍彦ほか編『憲法判例からみる日本』(日本評論社2016年9月)所収の論文がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、フランスにおける政府の憲法解釈の生成過程および政府の憲法解釈と裁判所・国会の憲法解釈との相互作用に関する文献の調査と検討を行うことが年間を通じた計画であったが、2度のフランス訪問調査および現地の憲法研究者からのアドバイス・コメントを通じて、研究代表者・分担者ともに順調に必要な資料の収集・分析を進めている。 また、コンセイユ・デタの評定官やフランス首相府の内閣事務総局副事務総長への聞き取り調査に際しては、フランス憲法研究者に同行いただいたこともあり、憲法解釈をめぐる国家機関間のフォーマルな調整プロセスだけでなく、インフォーマルな調整プロセスについても詳細に知ることができた。政府の憲法解釈の動態を解明することを主眼とする本研究課題にとって、インフォーマルな調整プロセスの重要性を改めて認識することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、フランスにおける政府の憲法解釈と他の機関の憲法解釈との関係について個別・具体的な事例に基づいて研究を進めてきたので、2年目以降は、日本における事例についても検討し、またフランス以外の他国の事例についても可能な限りで調査の範囲を広げたい。複数国間の比較を通じて、政府の憲法解釈と他の国家機関の憲法解釈との関係一般を解明する視座を得られるのではないかと考えている。また、初年度の調査では十分に明らかにできかなった内容や、追加の調査が必要であることが判明した部分については、引き続き現地での聞き取り調査を実施したい。具体的には次のような研究会および聞き取り調査を予定している。 ①政府の憲法解釈と他の国家機関の憲法解釈の対立と相互作用が見られる日本の事例、及びフランス以外の他国の事例について、それぞれ専門家を招いた研究会を実施する。 ②初年度には訪問できなかったフランス憲法院およびフランス国民議会の事務局に対して聞き取り調査を実施する。 ③日仏の憲法研究者が集まる日仏公法セミナーに参加して、可能であれば報告する。また、それを通じて知識・情報の提供を受ける。 ④比較法学会で本研究課題に関わる研究報告を行う。 研究会・学会での報告、および現地での聞き取り調査と並行して、これらを通じて明らかになった内容を比較の視点から整理し、複数国間の共通性・類似性を明らかにするとともに、それらの差異とそのような差異が生まれる法構造上・組織構造上の要因を分析する。また、聞き取り調査の内容については、解題を付したうえで可能な範囲で紀要等に公表する。
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Causes of Carryover |
初年度に購入予定であった図書の価格が、予定していたよりも安かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度購入予定の図書の費用に充てる。
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Research Products
(7 results)