2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03307
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
正木 宏長 立命館大学, 法学部, 教授 (30388079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行政法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の成果としては、アメリカのパブリックコメント手続の近時の動向を追った論文として、「アメリカにおける規則制定手続の新動向」行政法研究23号(2018)47頁を公表することができた。その中で1990年代にアメリカ行政法学では規則制定の骨化が主張されたが、2000年代に入り、骨化理論に対して実証的観点から疑問を呈する主張がなされていること。規則に代えてガイダンスを制定することで告知コメント手続を免れるというガイダンスへの逃避がアメリカの行政機関で見られること。交渉による規則制定手続は2000年代に入り使用が減少していること。暫定最終的規則制定や直接型最終的規則制定といった規則制定手続の新手法が実務上導入されていることについて紹介し、日本の行政立法手続のあり方についての提言を行った。 また、アメリカにおける訴訟制度を通じた国民の行政の意思決定への関与に関しても基礎的な研究を行った。国民が行政機関に対する訴訟において勝訴した場合であって、行政機関が裁判所が下した判決に従わない場合、裁判所がどのような行動をとるのかという点について、アメリカでは裁判所侮辱として裁判所によって行政機関への罰金が課せられたり、あるいは、裁判所による公務員個人の拘禁がおこなわれるのだが、この実体を紹介する論文の書評を執筆した。これについては来年度以降に公表予定である。 また、2017年度から2018年度の日本の行政法学の研究動向をまとめる紹介記事を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において示したアメリカのパブリックコメント手続の研究について一定の成果を示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度までの研究を総合して、総括的な研究を行う。ここで日本におけるパブリックコメント手続を始めとする行政参加の手法について、前年度までのアメリカ法研究の成果と照らし合わせて比較法研究を行い、日本における行政手続の改善策や、新しい行政参加手法の採用についての提言を行う。また、アメリカ環境法の分野における公私協働の取組に注目して行政参加手続を考察してみたいと考えている。そこでは訴訟制度を通じた行政過程への参加も検討対象となる。 日本の行政手続を検討するうえで、アメリカの連邦行政機関と対比を行う必要上、国の行政機関の実務が比較対象となる。検討されることとしては、日本におけるパブリックコメントの実施状況をふまえたうえで、アメリカにおけるパブリックコメントの実務で用いられている手法が導入可能であるかどうかということや、アメリカで試みられている交渉による規則制定や新形態の行政参加の手法が、日本に導入可能であるかどうかということが挙げられる。
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Causes of Carryover |
高額物品について次年度の直接経費と合算して支出をするため
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