2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03308
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
野一色 直人 京都産業大学, 法学部, 教授 (20551865)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 消費税 / デジタル取引 / 仮想通貨 / 電気通信利用役務の提供 / 特別徴収義務者 |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタル経済(Digital Economy)に対応するために、平成29年度税制改正において、消費税法上、新たに創設された、ビットコイン等の仮想通貨に係る課税関係の課題等の整理を進めた。具体的には、欧州司法裁判所の判決や国内における仮想通貨に係る法的分析等を踏まえ、平成29年度税制改正の内容の意義、資金決済法の定義から外れる仮想通貨の消費税に係る課税について、課題が残ることを明らかにした。 また、地理的に日本と類似性を有するオーストラリアにおけるデジタルプロダクトに対する物品サービス税の概要、特に、国外事業者に対する物品サービス税に係る課税制度の概要の整理や制度の創設に係る議論等との比較等を通じて、デジタルプロダクトを提供する国外事業者に対する日本の消費税の課税制度の課題等の研究を行った。 さらに、デジタルプロダクトを提供する国外事業者に係る税法上の情報収集手法について、加えて、デジタル経済やシェアリングエコノミーの拡大に伴い、注目されているいわゆる民泊に係る課税(宿泊税)について、最近の税制改正等の概要の整理等を通じて、新たな税務上の制度の特色や課題等に係る研究を行った。 具体的な研究業績として、「仮想通貨の取引に係る消費税法上の非課税措置の意義と課題」税研194号(2017年7月)、「税法上の新たな情報収集手法の意義と課題」産大法学51巻3・4号(2018年1月)、「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税における国外事業者の納税義務に係る法的課題」近畿大学法学65巻3・4号(2018年3月)を公表した。さらに、「宿泊税の徴収の方法に係る法的課題‐特別徴収義務者をめぐる法的課題を中心に-」(第507回日本税法学会関西地区研究会(2018年1月27日))等の研究報告を行い、デジタル経済に対応するための消費税等の新たな課税制度の意義・課題を明らかにすることを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象とする課題である、①消費税における新たな内外差別の問題、②日本の地理的特性への考慮の問題に関して、オーストラリアにおけるデジタルプロダクトに対する物品サービス税の概要、国外事業者に係る課税制度の分析、また、内外で議論が行われている、ビットコイン等の仮想通貨に係る消費税の課税関係について、平成29年度税制改正により創設された制度の意義、さらに、韓国への出張時における意見交換や京都市税務当局へのヒアリング等を通じて、デジタル経済の対応として、国外事業者等の事業者に対する消費税等の賦課制度の課題や今後の方向性等の整理を行い、これらの課題の検討を行った。 ③国外事業者が滞納した消費税を徴収する問題に関して、滞納処分の前提となる滞納者を含む事業者等に係る税務上の情報手法に係る法的課題の整理・分析を進め、研究業績を公表することができた。 ただ、当初予定の地域の外国出張が実施できず、また、③に関して、徴収共助に係る状況や法的課題に係る資料の収集・整理を進めたが、具体的な研究業績を公表できていないところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度であることから、平成28年度及び平成29年度における整理・検討等を踏まえ、①の消費税における新たな内外差別の問題については、国際的な取引のみならず、国内取引においても、「実体なき仕入税額控除」を防止するための方策や課題等について、分析を進め、現行の消費税法上において改訂すべき法的枠組み等の課題を明らかにする。 また、②の日本の地理的特性への考慮の問題との関連として、英国やオーストラリアに創設された、日本にない制度であるオンラインマーケットプレス(プラットフォーム)における連帯納付制度の概要や課題等を明らかにし、今後、税制改正により設けるべき項目等を整理する。さらに、③の国外事業者が滞納した消費税の徴収の問題に関しては、引き続き、日本が締結した租税条約上の課題や国内法の法的課題等に係る分析を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
出張等に係る費用が、渡航費及び宿泊費が先方(招聘元)の負担であったこと、また、出張先の調整がつかなかったことから、予想よりも低額であったため、繰越が生じることとなった。 次年度において、書籍の購入、出張等、研究の遂行のための費用に充当することを予定している。
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Research Products
(5 results)