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2018 Fiscal Year Research-status Report

イノベーション政策下における国家・大学間関係に関する公法学的比較研究

Research Project

Project/Area Number 16K03309
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

中島 茂樹  立命館大学, 法学部, 授業担当講師 (10107360)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords科学技術・イノベーション政策政策 / 統合イノベーション戦略 / 大学改革 / 2040年に向けた高等教育のグランドデザイン / 学問の自由 / 大学の自治 / 教授会
Outline of Annual Research Achievements

科学技術政策の基本戦略として「統合イノベーション戦略」が2018年6月15日に閣議決定された。安倍首相は「この戦略を、内閣の成長戦略のど真ん中に位置付け」るとし(6月14日の「総合科学技術・イノベーション会議〔CSTI〕」)、「イノベーション関連の司令塔機能強化を図る観点」から、CSTIと、そのほかに設置されていたIT総合戦略本部、知財本部、宇宙開発戦略本部などとをまとめて内閣官房長官を議長とする「統合イノベーション戦略推進会議」が新設され(7月25日)、「官房長官を中心とした横断的かつ実質的な調整・推進機能を構築する」ものとされた。
こうしたイノベーション戦略を「大学改革」に即して具体化したのが11月26日の中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」である。そこでは、これまでの「学部の枠組み」を越えて「学士課程のPDCA(品質管理)」を向上させる、その「目標・成果」の点検・評価の指標と結びつけ、可視化と公開をはかる(実務家教員や外部人材の参画、地域社会や産業界への説明責任など)、そしてそれらを管理する「学長のリーダーシップの下、全学的な教学マネジメント」の体制を確立していく、従来の「学部教授会」を越える「機能別教授会」などが提示され、その具体的工程表として、19年2月1日に「高等教育・研究改革イニシアティブ(柴山イニシアティブ)」が公表されるとともに、19年1月に招集された第198国会には「グランドデザイン」を制度的に具体化するために、「大学等における修学の支援に関する法律案」、「学校教育法等の一部を改正する法律案」の二つが提出されるに至っている。
本年度は、上記のごとき、産業競争力の強化という経済成長戦略(アベノミクス)に包摂された科学技術・イノベーション政策および高等教育政策=「大学改革」につき、その歴史的展開過程をも踏まえ、一定の検討を進めてきた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2018年6月15日に閣議決定された「統合イノベーション戦略」、「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針2018)」、「未来投資戦略2018」、「第3期教育振興基本計画」等においてイノベーション実現の「要」として位置づけられているのが「大学改革」であり、こうした方向での戦略を具体化したのが「22年後となる2040年において実現すべき高等教育の姿を見据え、そこから逆算して」取り組むべき改革を明らかにしたという中教審答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(2018年11月)である。これらの政府方針おいて、「大学改革」は、「我が国がグローバル競争に打ち勝ち、イノベーションによる持続的成長を実現するためには、破壊的ともいえる画期的な科学技術イノベーションを生み出す場である大学に活力を与えることが必要」(「統合イノベーション戦略」)とされる。
科学とは真理探究の営みであり、大学はそのための知的共同体であるとすれば、ここには、これを否定して産業競争力の強化にのみ方向づけられた戦後最大の高等教育改革=「大学改革」が推し進められているかのごとくである。
かくして、「大学改革」を含む高等教育政策が内包する問題は、わが国の将来の国家像ともかかわって、①グローバル競争下の経済の成長戦略(アベノミクス)の枠組みの中に位置づけられていること、②国防・国家安全保障政策と一体化したデュアルユース技術の積極的活用に向けた大学や研究機関との連携重視、そして、③これらの政策を実体化するための大学への国家関与の強化、という三つの側面をトータルに認識・検討することが不可避的に要請さることになる。こうした問題の広がりもあって、作業は遅れ気味である。
また、イノベーション政策下における「大学改革」のモデルとしてのアメリカおよびドイツの法制度研究については、一定の研究の前進を見るにとどまっている。

Strategy for Future Research Activity

イノベーション政策下における国家・大学関係という観点から見て、2018年度は時代の転換を画するきわめて重大な政策決定がなされた年と見なされると思われる。そこで、今後の研究の重点として次のような課題が設定される。
(1) 中教審答申『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン』とその具体化としての「大学等における修学の支援に関する法律案」、「学校教育法等の一部を改正する法律案」の二つの法律案を国家・大学間関係という観点から検討すること。
(2) 国立大学の法人化以降、中期目標・中期計画制度の下での中期目標案の策定、毎事業年度ごとの業務実績評価、中期目標期間の業務実績評価と通しての国家関与、さらには、国立大学法人運営交付金の漸次的削減と競争的配分部分の増大や国立大学の研究成果に応じての交付金の傾斜配分に基づく国家関与の問題点の検討
(3) 国防・国家安全保障政策との関連では、「国家安全保障戦略」(2013年閣議決定)、「防衛計画の大綱」(2013年閣議決定)、経団連「防衛計画大綱に向けた提言」(2013年)、経団連「宇宙基本計画に向けた提言」(2014年)、武器輸出三原則を変更した「防衛装備移転三原則」(2014年)などによって、「大学や研究機関との連携充実」、「防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的活用」の方針が一挙に加速化し、2015年には、防衛装備庁による「安全保障技術研究推進制度」(委託研究費)がその運用を開始している。これについては、日本学術会議が2017年に、憲法23条の学問の自由を根拠に「政府による研究への介入」を問題視する声明を公表しているが、この制度自体の問題点とそれに対する各大学の対応などを検討し、国家関与の特徴を明らかにすること。
(4) イノベーション政策下における「大学改革」のモデルとしてのアメリカおよびドイツの法制度研究

Causes of Carryover

連れ合いが、昨年5月に病気入院、その後の一連の看病にもかかわらず、10月末に永眠したことにより使用計画の変更を余儀なくされ、次年度使用額が発生した。
葬儀、納骨など、その後の一連の行事を無事に執り行い、一段落したところから、研究計画の実現に向けてその資金を執行することとしたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 安倍「強権政治」の特質――新自由主義的統治をめぐって2018

    • Author(s)
      中島茂樹
    • Journal Title

      日本科学者会議第22回総合学術研究集会予稿集

      Volume: ― Pages: 104~105

URL: 

Published: 2019-12-27  

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