2016 Fiscal Year Research-status Report
低所得世帯教育費支援法制の日韓比較公法学的実証的研究~韓国無償給食論争を中心に~
Project/Area Number |
16K03310
|
Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
藤澤 宏樹 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (60310984)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 義務教育無償 / 韓国 / 無償給食 / 教育を受ける権利 / 生存権 |
Outline of Annual Research Achievements |
次の研究業績を公表した。 論文は次の通りである。(1)「教育と福祉の交錯ー学校給食費公会計化論の検討ー」大阪経大論集67巻2号(2016)143-166頁:昨今話題となっている、学校給食費公会計化論について、近年の公会計化論は、未納世帯からいかにして給食費を回収するかという「取り立て」論に終始しており適切でないこと、そして公会計化は、給食費負担の軽減・無償化という指針を有した上で行わないと積極的意味がないことを指摘した。(2)「韓国無償給食の現状と課題」大阪経大論集67巻5号(2017)79-92頁:韓国では無償給食制度を導入する自治体が増えている。本稿では、その現状を最新のデータに基づいて明らかにした。80%程度の自治体が無償給食制度を導入していることがわかった。今後も無償給食制度の動向を観察していく予定である。 研究報告は次の通りである。(1)「韓国無償給食制度の現状と課題」東京社会保障法判例検討会(早稲田大学)2017年9月:論文(2)「韓国無償給食の現状と課題」に関連した研究報告である。上述した韓国無償給食の現状に加えて、韓国無償給食導入の賛否に関する論争(韓国無償給食論争)についてもまとめた。無償給食論争については、無償給食は子どもの権利保障にとって不可欠である見解と、無償給食はポピュリズムの典型であり、すべての子どもに給食を与えるよりも、貧困児童に予算を集中的に投下すべきであるとする見解とのせめぎ合いが存在することを紹介した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国の無償給食導入の現状について、新しい状況を紹介することができた。また、無償給食論争についても、若干の検討を行うことができた。これらのことは本研究にとって大きな成果であると考えている。 日本の動向については、学校給食費公会計化論について検討したが、ここでは、学説と市町村の動向の双方を検討することができた。とりわけ学説の動向は、この種の問題では軽視されがちなところと思われるので、一定の成果があったものと判断できるのではないかと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
学校給食費無償の状況について、日韓両国の現状を明らかにしていきたい。韓国については論文を公表したので、日本の状況を見ていきたい。学校給食費のみならず学校教育費全てを無償としている市町村もあり(全国に7つ)、これら市町村の現状を追っていきたい。同時に、給食費補助を実施している市町村の現状についても明らかにしていきたい。この二つの作業を通じて、日本における学校給食費補助の全体を明確にし、これを韓国の現状と突き合わせて検討していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
現状調査の日程調整がうまくいかなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
無償給食の現状を明らかにするための旅費及び物品費に使用する予定である。
|