2018 Fiscal Year Research-status Report
低所得世帯教育費支援法制の日韓比較公法学的実証的研究~韓国無償給食論争を中心に~
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16K03310
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
藤澤 宏樹 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (60310984)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 就学援助制度 / 学校給食 / 無償給食 / 韓国 / 福祉権 / 教育を受ける権利 / 生存権 |
Outline of Annual Research Achievements |
次の研究業績があった。(1)共著『よくわかる社会保障(第5版)』pp26-28(社会保障と諸科学 法律学)、pp66-67(社会保障の法律)、pp68-69(社会保障と関連法):社会保障の入門書の解説であるが、最新の研究成果・データを盛り込んである。 (2)共著『福祉権保障の現代的展開』pp121-141(就学援助制度・義務教育無償・福祉権):低所得世帯教育費支援法制の中心的存在である就学援助制度について、憲法学・教育法学・社会保障法学の研究不足を指摘し、就学援助制度の理念・歴史的展開を精査し直した。その結果、就学援助制度は、教育にかかる費用のみを保障するだけでなく、学校生活全般を保障しようとする仕組みであることを明らかにした。また、同制度は、義務教育無償範囲の拡大を想定して作られたものであるから、制度の実施主体である市町村の財政的努力によって、段階的無償化を実施することができるとした。さらに「福祉権」のコンセプトが、就学援助制度の多様な側面を整合的に説明できるとした。 (3)単著「韓国の無償給食ー現況と未来ー」都市問題2018年12月号pp32-36:韓国無償給食をめぐる最新状況を、韓国の給食専門誌をもとに明らかにした。また、韓国では、無償給食から無償制服へという、義務教育無償の範囲を広げようとする動きがあることを示した。 研究会報告は次の通り。「就学援助制度・義務教育無償・福祉権」『福祉権保障の現代的展開』研究会(2018年6月10日;於同志社大学):上記研究業績(2)の内容を発表したもの。日本の就学援助制度の現況、韓国無償給食の現況を織り交ぜつつ、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の業績は、これまでほぼ未開拓であった就学援助制度研究、韓国無償給食研究の領域に分け入った点で、一定の意義が認められるのではないかと考えている。このことは代表者の韓国無償給食研究が、藤原辰史『給食の歴史』(岩波新書、2018年)において詳細に紹介されたことが傍証となるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国無償給食研究のさらなる深化を目指したい。韓国の最新事情を注視して、現況をできるだけ詳細に紹介できるようにしたい。そこから、義務教育無償の範囲を拡大する理論を抽出して、日本の憲法26条論への貢献を目指したい。さらに、「子どもの貧困」解決の一助となる理論構築を目指したい。
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Causes of Carryover |
学内業務多忙のため次年度使用額が生じた。 韓国無償給食の最新事情を詳細に把握するための書籍費・渡航費等に充てる予定である。
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