2017 Fiscal Year Research-status Report
国際義務の「迂回」への法的対応についての理論的研究:国家の規範的整合性に注目して
Project/Area Number |
16K03316
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
小林 友彦 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20378508)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 迂回防止 / 国際法と国内法 / 直接適用可能性 / TPP / WTO |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度は、前年度に行った実証分析の成果を基に、WTO法に限定されない一般国際法上の理論的検討を行うことに重点を置いた。具体的には、まず、(1)そもそも「迂回」について、義務の「違反」と概念的に区別して別途に論じることが屋上屋を架すことにならないか、あらためて検討した。次に、(2)国際義務の「迂回」行為およびそれに対抗する「迂回防止」措置を類型化することへの要請がある一方で、そのような類型化を行うこと自体が新たな「迂回」の道を開くことになるため何らかの包摂的な規定を設ける要請があるため、両者の調整のあり方について検討した。その上で、(3)ある国家が、私人による「迂回」行為に対抗するために、国際義務に適合した形で国内法上「迂回防止」の制度を整備することと、当該国家が国際義務を「迂回」することに防止するための国際的な規律を整備することとの間に、どのような規範的な関係や相互作用があるのかについて、整合的に説明しうる理論的枠組みを探求した。 このように理論的検討は順調に進んだものの、実証研究の対象として特に注目してきた環太平洋パートナーシップ(TPP)協定やWTOドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド)交渉については、政治的に流動性が高い。そのため、年度途中で分析対象を変更する必要が生じた。このため、研究成果として公表できたものが若干少ないことはたしかである。最終年度においては、これまでの研究成果が適時に発表できるよう努める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、理論的検討は順調に進んだものの、実証研究の対象として特に注目してきた環太平洋パートナーシップ(TPP)協定やWTOドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド)交渉については、政治的に流動性が高く、いまだその帰趨は明らかでない。そのため、年度途中でFTA/EPAの原産地規則に関する論点などへと分析対象を変更する必要が生じた。このため、研究成果として公表できたものが若干少ないことに鑑み、「おおむね」順調に進展しているものと認めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目(最終年度)は、研究成果のとりまとめと公表に重点を置く。確定的な研究成果を挙げることができるとは限らないものの、本申請課題は、比較的新しい課題について実証分析の手法開発と理論分析の新展開のための足がかりを設けることが重要な目的の一つであるため、作業中の段階であっても積極的に研究成果を公表することに意義を見出しうる。そして、関連分野の研究者との議論を通して、より広い分野に学術的な貢献をすることを図る。
|
Causes of Carryover |
米国の離脱表明に伴い、TPP協定中の規定について討議するための出張を当該年度に行う必要性が薄れたため、次年度に延期することとした。そのため、旅費・謝金等を次年度に使用するため留保したことによるものである。
|