2016 Fiscal Year Research-status Report
国連平和維持活動に伴う国際責任の多様化と裁判権免除の制限についての研究
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16K03319
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
坂本 一也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00320325)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際責任 / 国連平和維持活動 / 国際刑事法 / 裁判権免除 / 特権免除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国連平和維持活動(以下、PKO)の質的・量的な変化に伴って、近年、より一層注目されるようになったPKO関連要員による違法行為・犯罪行為について、それらから生じる国際責任及びその責任追及プロセスにおける裁判権免除・特権免除がもたらすアカウンタビリティギャップについて分析し、その現状と課題を明らかにすることを目的とするものである。 平成28年度は、主として次の2つの作業を行った。まずは、本研究の予備的な分析として行ったPKO関連要員の法的地位についての検討である。この検討は、国際責任における行為の帰属及び裁判権免除・特権免除が付与される主体の判断に不可欠なものである。具体的には、国連と受入国の間の地位協定(SOFAs)及び要員派遣国との間の了解覚書(MOU)等の分析を行うとともに、その地位が不明確なPKOに関わる民間軍事会社(PMSC)については関連書籍等の先行研究の検討を行った。以上の検討から、多様化するPKO関連要員―軍事・警察・文民要員等―の法的地位の基本的な枠組みについて把握することができた。ただし、PMSCについてはその雇用形態により、その地位が変化することもあり、今後も個別の事例分析を継続して行う必要がある。次に、本研究の過程で検討した国連事務総長報告において言及されていたPKO関連要員による性的搾取・性暴力についての不寛容(zero tolerance)政策の現状分析である。この分析内容については、特に、PKO軍事要員による違法行為が裁判に付されることなく不処罰とされていることが課題となっており、それに対して一定の措置―違法行為を行った要員の国籍の公表、要員が所属する部隊全体の再配置要請―がとられていることを研究論文の中で示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PKOの各ミッションに関わる文書(SOFAs/MOU等)、年次報告書、国連事務総長報告書などの一次資料については国連のウェブサイトから入手できており、また、PMSCに関する先行研究を含め、本研究の関連書籍等の収集もできたことから、資料収集についてはおおむね当初の計画に沿って遂行できたといえる。ただ、収集した各種資料についての分析に時間がかかっため、PKO関連要員の法的地位についての検討が基本的な枠組みの把握にとどまり、また、本年度の作業と並行して行う予定であった国連・国家の国際責任及び国際刑事法に関する資料収集及びその分析に十分に取組むことができなかったことから。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に取り組む予定であったPKO関連要員の法的地位の実証的な研究を継続し、その遅れを取り戻すとともに、平成29年度の研究計画として予定しているPKO関連要員の違法行為に対する国連・国家の国際責任(重複帰属と責任分担)と国連の民事裁判権からの免除の問題について検討する。具体的には、本研究に関連する近年の国際裁判・国内裁判の判決の分析を行うとともに、国連国際法員会(ILC)及び国際法協会(ILA)での議論、関連書籍の検討を行うことにする。なお、期間中に資料収集と調査のためにオランダへの出張を計画している。また、得られた成果については、論文の形にまとめて発表することにしたい。
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Causes of Carryover |
刊行予定とされていた海外の研究関連書籍の刊行の遅延により本年度購入できなかったこと及び次年度の学会出張及び海外での調査に備えて出費を抑えたことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度購入できなかった書籍も含め、研究関連書籍等の購入を行い、また、学会への出張旅費及び海外での調査旅費として使用することで、使用計画に基づいた適正な執行をする予定である。
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