2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03320
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水島 朋則 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (60434916)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際機構 / 国家管轄権 / 管轄権免除 / 安保理決議の実施 / ヨーロッパ人権条約 / 裁判を受ける権利 / 国際責任法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで研究代表者が行ってきた「外国国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法」および「非国家主体に対する国家の管轄権行使に関する国際法」の研究を基礎としつつ、近年、いくつかの場面で実際に問題となっている国際機構の活動との関連という視点を加えた分析を行うことにより、「国家の管轄権行使に関する国際法」の全体的かつ現代的構造を解明しようとするものである。現代の国際法が、国際機構の内部的および対外的活動との関連における国家の民事管轄権行使、また、国際機構(典型的には国際刑事裁判所)の活動との関連における国家の刑事管轄権行使をどのように規制しているのかを明らかにし、そのような国際法の規制の下で、望ましい国家の管轄権行使のあり方を探究し、提示することが、本研究の目的である。 4か年での実施を予定している本研究の1年目である平成28年度は、研究代表者のこれまでの研究と本研究とをつなぐものとして、「外国国家に対する国家の管轄権行使に関する国際法」および「非国家主体に対する国家の管轄権行使に関する国際法」について、外国国家の財産に対する執行管轄権行使に関する問題と非国家主体が所有する美術品に対する国家の管轄権行使に関する問題をそれぞれ素材として、論文をまとめた(後者は未公表)。また、国際機構の内部的活動の一種として本研究に関連し得る世界貿易機関(WTO)の貿易政策検討制度を素材とする論文をまとめて公表した他、国際機構の対外的活動と国家の民事管轄権行使との関係(国連加盟国による安保理決議の実施)が問題となったヨーロッパ人権裁判所(大法廷)2016年6月21日判決(Al-Dulimi対スイス)について研究会で口頭発表を行い、他の研究者から有益な示唆やコメントを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目(平成28年度)の計画として記していたように、研究代表者のこれまでの研究と本研究をつなぐための論文をまとめるとともに、研究計画の中でヨーロッパ人権裁判所の小法廷判決(2013年)に言及していたAl-Dulimi事件について、本研究開始後に出された同裁判所の大法廷判決の分析作業に着手し、研究会での口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に分析作業に着手したAl-Dulimi事件を素材とする論文の執筆作業を進めるとともに、国際行政裁判所を通じた国際機構による管轄権行使と国家の管轄権行使との競合関係について、国際労働機関(ILO)の活動等を素材とした研究を進める。
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Research Products
(2 results)