2016 Fiscal Year Research-status Report
武力紛争法における付随的損害論の再検討-原子力艦艇戦闘喪失と放射能汚染
Project/Area Number |
16K03323
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真山 全 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80190560)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 武力紛争法 / 国際人道法 / 付随的損害 / 放射能汚染 / 原子力潜水艦 / 海戦法規 / 海上中立法 / 原子力発電所への攻撃 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力艦艇戦闘喪失の国際法的評価のため、2016年度は、主に武力紛争法のいう付随的損害で説明が可能かを検討した。まず、武力紛争は国際的と非国際的のそれに区分され、付随的損害は主に前者の武力紛争についていわれてきた。そこで、非国際的武力紛争においてはそもそも付随的損害概念が存在したかの検討を行う必要があり、この検討結果について学会報告を行った。右報告は学会誌に掲載された(真山全「武力紛争法と人道化逆説」世界法年報36号(2017年3月)。 さらに、原子力潜水艦喪失の場合を中心として、海上における国際的武力紛争において付随的損害で観念できる範囲、海域区分による相違、及び中立国損害の場合を検討し、外国国際法専門誌にこの結果を論文として掲載した(Akira Mayama,"Combat Loss of Nuclear-Powered Warships, Contamination, Collateral Damage and the Law,"U.S. Naval War College International Law Studies, Vol.93(2017))。 さらに、原子力推進又は通常動力の軍艦の喪失から生じる環境汚染問題の基礎的資料を収集しつつある。これは、上記のような理論的研究に続き、実際の問題の状況を調査する段階に入ったからである。この一環として、南京及び海南島を訪問し、中国人民解放軍関係者から情報を収集した。また、米海軍大学校関係者の訪日時をとらえて、同海軍の状況について照会した。また、本職も参加した海上自衛隊幹部学校主催シンポジウムに出席の諸国の海軍士官に関係の事項を質問する機会もあった。これらの他、露英仏に関する文献上の調査も行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度にあっては、理論上の研究を先行させたが、それは順調に進展し、国内学会誌及び外国専門誌に年度内に各1本の論文を掲載することができた。特に右外国専門誌は、武力紛争法や海洋法の分野で高く評価される伝統ある雑誌であるため、これに招待論文として掲載されたことは大変喜ばしいことであった。 また、現地訪問と意見聴取が困難であると思われた中国において関係者と面談できた。さらに日本を訪問する外国専門家と協議する機会もあった。こうしたことから、2016年度においては概ね順調に研究が進展したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論上の検討に続き、実際の関係事例における法的処理を調査する。これは、米英仏の最近の事例、及び過去の戦争の事例である。また、2016年度で着手出来なかった喜界島沖米海軍水爆紛失事故の文献上の調査も行いたい。この事故は、核兵器事故であって、原子力艦艇戦闘喪失事例ではないが、ベトナム戦争交戦国米によるその第三国日本近海での核事故として中立法等と一定の関連性を有するので検討を加える。
|
Causes of Carryover |
大阪東京往復の出張旅費としての使用を計画していたが、先方との日程の調整がつかず、その分について未使用金(29,600円)が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に予定していた出張に関して、改めて日程調整を出張予定先関係者と行い、2017年度に実施できるようにし、この未使用金を充当する。
|