2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03326
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩本 禎之 (李禎之) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20405567)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際司法裁判所 / 救済方法 / 違法行為の中止 / 南極捕鯨事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際法における実体法と手続法の相互作用を裁判という局面から考察することを試みるものであり、国際司法裁判所に対して「①誰が」「②何を」請求できるのかを判例分析を核として探求することをその目的とする。平成29年度は、救済方法(上記②の問題)、とりわけ、行為命令の一類型を構成する「違法行為の中止」(不作為義務違反の場合には差止命令の形態をとり、作為義務違反の場合には義務付け命令の形態をとる)に焦点を当てて検討を進めた。 「違法行為中止」請求は継続的違法行為に対してのみ許容可能であり、その判断基準は判決時現在の法関係に影響する行為かどうかであるということが判例上で確認できたが,それ以外の考慮要因を見い出すことは困難であった。また、違法行為中止を求める行為命令の性格に関連して、南極捕鯨事件の分析および調査捕鯨に関連する事案(ワシントン条約(CITES)や国連海洋法条約(UNCLOS)第65条の解釈適用)の検討から、違反の対象となる一次義務が協力義務である場合、当該義務を規定する条約体制を踏まえて協力義務の内容を如何に把握するのかという点が違法行為中止請求の要否に影響を及ぼし得ることを明らかにした。ただし、違法行為中止命令の発出には国際司法裁判所も慎重であり、そうした抑制的運用は訴訟当事者意思の尊重という観点から正当化し得るものと考えられる。そして、この点は国際司法裁判所のみならず国際裁判一般に通用し得る考慮要因であることを国連海洋法条約附属書Ⅶの仲裁手続である南シナ海仲裁の分析を通じて確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
救済方法について、判例・事案に基づく実証的な検討を行い、南シナ海仲裁等との比較検討も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、再発防止の保証に焦点をあてて、救済方法の展開を解明する作業を進める。 再発防止の保証も行為命令の一類型をなしており、通常,差止命令であると考えられよう(ただし,防止に向けた特定措置を含んだ「特定的保証」 の場合は,差止命令ではなく義務付け命令といえる)。検討作業は、①要件として「再発の危険性」を如何に評価するのか、②再発防止保証を求める行為命令の法的性格(一次義務との関係)、③再発防止保証の否認根拠とされる義務履行推定原則の射程、といった点を中心として進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 諸般の事情から予定していた海外出張を延期したため。 (使用計画) 8月に国際的学会の世界大会(開催地:豪州)に参加し、課題研究の成果に関する意見交換を実施する。
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Research Products
(1 results)