2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03330
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
北村 泰三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30153133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 人権条約 / 正当性 / 履行監視 / ヨーロッパ人権条約 / EU法 / ヨーロッパ人権裁判所 / 手錠・腰縄による拘束 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「被告人を入退廷時に手錠・腰縄で拘束する措置は人権侵害か?国際人権法からの考察-」と題する論考を世界人権問題研究センター・研究紀要23号で公表した。この問題は、わが国の実務において問題提起されてきた点であり、最近でも実際に訴訟にもなっている焦眉の論点の1つとなりつつある。すなわち被告人を裁判所に出廷させる際に、どのような形で身柄を扱うのかという点は普遍的な問題であり、国際人権法からの論点考察も意義がある。勾留中の被告人を一律、例外なく法廷に入退廷させる際に、手錠・腰縄で拘束する取扱いは、人格の尊重を受ける権利および無罪の推定を受ける権利を侵害しているのではないかという点について、国際的視点から議論した内容である。 2.2019年3月には『ヨーロッパ人権裁判所の判例II』(信山社)が刊行された。本書では、2008年に発行された同名図書の全く新たな内容とした判例解説書である。本邦でも、稀なヨーロッパ人権裁判所の総合的な判例研究の成果であり。本書において編者の一人として参加した他、「EUのヨーロッパ人権条約への加入問題」(15-20頁)、「受刑者の選挙権」(131-134頁)、「被疑者の取調べと弁護人立会権」(261-264頁)の執筆を行った。 3.2019年3月には、「ヨーロッパ人権裁判所の判例にみる公正な裁判と弁護人立会権-イブラヒム他対イギリス事件判決を中心に-」を脱稿した。本論文は、故宮崎繁樹明治大学教授・総長の追悼記念論文集に掲載される予定である(現在、校正中で日本評論社より刊行予定)。本論文は、テロリスト容疑者の取調において弁護人立会権の制限がいかなる条件の下で制約を受けるか等に関するヨーロッパ人権裁判所の最近の判例を中心に取りまとめたものである(28,000字程)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究自体は、概ね順調に進展している。昨年度までは、国際人権法学会の事務局長の任にあっために、学会事務に追われて、全体的な研究の整理、取り纏めが行われていない。そのために研究期間の延長を願いでた。本年度は事務局長も退任したために、取り纏め作業に当たりたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.これまでの研究によりヨーロッパ人権条約に関する分析とEUにおける刑事司法手続関係の判例分析を中心に行ってきた。これらを取りまとめて、EUの分裂を回避し、統合を維持しさらに進めていくためには、EU統合の正当性という観点が重要である。 2.これらの視点から、EU法とヨーロッパ人権条約との間の相互の緊密な関係の発展が今後の重要な課題であると考えている。その意味において、国際的人権保障が果たす意義および役割を論証することに意義があると考えている。 3.以上のような方向で研究の取り纏めてみたい。
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Causes of Carryover |
学会事務局長の職にあったために、当初予定していた外国における調査研究等がまだ十分に行われていない。今年度中には実施してまとめる予定である。
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Research Products
(6 results)